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☆嫌な場所③
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「ぁ………う………」
床に落ちているボタンを見て、心臓がバクバクバクバクとなる。
声が出ない。掠れた吐息しか出てこない。
膝がガクガク震える。立っていられない。
頭が……おかしくなりそうだ……。
あのボタン……もしかして……俺のだったボタン……?
1年も前のこと。そんなことあるわけない
そう思っても頭にフラッシュバックする光景。
先輩が俺のシャツに手をかけてブチっと引きちぎり………
ボタンが……床にコツンと落ちた……
「っ………あぁ………うぁ……」
あれが始まりだった。それから、俺は…先輩達に……俺は…俺は……!!
ズキンズキンと頭が痛む。
痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「明!!!どうしたんだ!!!大丈夫か!?」
和也が俺の様子を見て体を揺さぶる。
それでも止まらない体の震え……
頭に流れてくるあの時の記憶……
薄暗いこの教室で、いやらしく腰を揺らしてた自分。
好きでもない人に触られて感じる自分。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!
止まってくれよ……!そう思ってもフラッシュバックする。
考えたくない……何にも考えたくない……!
「あ…あ………あぁぁぁぁ……!!」
叫びまくる。頭で考えていることを全部外にぶちまけるように。
床に落ちていたボタン1つで動揺している。……克服なんて…無理なのかな…
俺は……このことを一生忘れられないの……?
一生……俺は苦しみ続けるの……?
幸せに……なれない…の……?
汗が全身からブワッと噴き出す。
とても怖くなった。ギュっと腕を抱いても一向に止まらない震える体……
涙もボロボロと流れてくる。
もう限界で、俺はガクンとその場に座り込んだ。
怖い………怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
誰か……誰か………助けて……助けてよ……
そう思いながら無意識に手を空中に伸ばした。その手をギュッと握られる。
「……かず…や……?」
手を握ってくれていたのは和也だった。
誰かがいるのが安心する…存在を確かめたいよ…
「和也……ちゃんと…いるよね……
ちゃんと…そこに……いてくれてる…?」
そう聞いた時にはもう涙でボヤボヤになった視界では、和也が今どんな顔をしているかなんて分かんなかった。
でも……和也は今……すごく優しい顔をしてると思ったんだ。
「うん……いるよ…ちゃんと、明のそばにいる……。」
頷きながらそう言った和也の声が凄く優しかったから……。
握られていた手に力が込められた。
暖かくて……安心する……。
大粒の涙が大量にボロボロと流れ出した。涙が止まらないよ……
次の瞬間……
グイッと手を引かれて……
俺の体が暖かいものに包まれた。
あれ……?なんだろう……
思考もハッキリしていない俺は、和也に抱きしめられていることを理解するのに、かなりの時間がかかった。
蓮とは違う匂い……
蓮は花のような優しい匂い……和也はお日様のような暖かい匂い……
そんなことを考えていると、
「………俺……お前の辛い顔見たくない……
そばにいたいよ………」
辛そうな…苦しそうな…そんな和也の声が聞こえて
抱きしめられている力が強くなった。
………和也……。
俺は、その意味をちゃんと考えられなかった。和也は「友情」の意味で言っているんだろうと勝手に考えていた。
でも、あのとき……ちゃんと和也を押しのけていれば……
ちゃんと言葉の意味を理解していたら……
……ちゃんと授業に出ていれば……
あんなことにはならなかったかもしれない……
そんなことも知らない馬鹿な俺は……あの時は誰かにすがりたくて。
その一心で…俺は和也を………抱きしめ返してしまった…。強く…強く…
そのとき誰が見ているかも知らずに……
その誰かが傷ついた顔で見ていたのも…知らずに……。
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