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☆優しい水
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「少し…落ち着いたか……?」
和也は心配そうに、しゃがんで俺の顔をのぞき込んだ。
「うん…、ありがとう和也…」
俺は、あれから和也に担がれてゲームセンターを出た。
それから和也はゲームセンターの近くにあった外のベンチに俺をゆっくりと下ろした。
やっぱり、外の空気は落ち着くなぁ…。胸いっぱいに空気を吸い込んで深呼吸をした。
深呼吸をすると頭痛や気持ち悪いのも少し和らいで楽になった。
ゲームセンターは駅から近いこともあって人通りも多い。
俺は、ぼーっとしながら目の前を歩いている人達を眺めていた。
「ちょっと待っててな。」
俺がぼーっとしていたら、横に座っていた和也が席を立って走っていった。
どこに…行くんだろ………。
走っていった和也の背中を眺めていると、なぜだか涙が出そうになった。
なんでだかわからない。知らない。でも胸がいっぱいになってしまった。
これ以上……和也を待たせて気持ちに応えないのはいけないんじゃないかとか……。
蓮への気持ちは無かったことには出来ないけど無くした方がいいんじゃないかとか……。
もう分からない。自分の気持ちが…答えが………、
悲しいわけでも苦しいわけでもないのに涙が止まらない……。
自分は………俺は……汚い………。
ウジウジと頭で考えて行動に移そうとしない。
なんとか、しなくちゃ……。和也に気持ちを伝えなきゃ……言わなきゃ、伝わらないんだから……。
………俺と……付き合ってくださいって…。
確かに蓮への気持ちが無くなったわけじゃない……、きっと和也をこれから傷つけることだって沢山出てくる。
蓮と別れてから何日もたってないことも分かってる。
でも……このまま足踏みをしていたって仕方が無い。
変わりたい……それに幸せになってほしい。って言って背中を押してくれた蓮の気持ちを考えなきゃいけないんだ。
そんなことを考えていると、雲行きが怪しくなりザーッと雨が降ってきた。
「えっ…!さっきまで天気よかったのに…!?
和也 大丈夫かな……」
そう思ってソワソワしていると向こうから和也が飲み物を抱えて走ってきた。
「た、ただいまぁ~~」
はぁはぁと息切れをしながらにっこりと笑った和也に胸がきゅんとなった。
雨はバケツをひっくり返したような感じで和也はぐっしょりと濡れていた。
「か、和也 大丈夫かよ…!?」
「よゆーよゆー!あ、それよりこれ。」
和也は水を俺に渡した。きっと具合が悪いと言った俺のために買ってきてくれたんだ…。
しかも、その水についているおまけには蓮が俺に初めてくれた あのキーホルダーの色違いだった。
「和也……、これ………」
「あ、それな!明がさっき好きって言ってたから買ってみたー!……どう!?気に入った!?」
そう言った和也は俺に向かってVサインをした。
あぁ……きっと和也は蓮に似てるところがある…。
それはきっと………、
俺の気持ちを…心を温かくして安心させてくれるところ…。
「好き…………」
気づいたらそんな言葉が俺の口から零れていた。
和也の髪から流れていた雨の雫がアスファルトの上にこぼれた。
雨は……まだやまない………。
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