アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
15
-
10代の終わりから20代前半にかけて、男の体つきは劇的にかわる。
きちんとトレーニングしていればなおさらだ。
藤川も、しなやかだが細かった体が見る間にしっかりしてきた。
見た目はまだスレンダーだが体重もかなり増えたらしい。
もうちょっとしたら押し倒せなくなるかも。
「丈さん、飲み過ぎちゃいますか。お酒ちょっと減らしたら。」
「うん・・。」
「野菜もっと食べてください。コンビニ弁当ばっかりやったらあきませんよ。」
「はいはい。」
たまに説教されるようになってきた。嫁か、お前は。
でも、なんだかあったかい気持ちになる。
立ち回りのある芝居のときに指導してもらっている、殺陣の先生が稽古に来た。
定期的に出張講義をしてもらっているのだが、藤川が劇団に来てからは初めてだった。
藤川は最初のうちはへっぴり腰で木刀に振り回されていたが、
しばらくすると面白くなってきたようだった。
先生にスジがいい、と褒められて調子にのっている。
確かに、あの強面に刀を持たせれば、けっこういい絵面になるかもしれないな。
だが俺は立ち回りは今一つ苦手なので、あいつのお手本にはなれない。
殺陣師が、すうっと片足を引き、踏み込んで切りかかる藤川の刀を躱す。
そのまま刀を体につけて横に倒す「脇構え」から「抜き胴」。
振り返って「袈裟斬り」。
無駄のない、流れるようなうつくしい動き。
「ほら、やってみ。」言われて、懸命に憶えようとしている藤川と殺陣師の
やりとりを、指をくわえて眺めながら、軽い嫉妬を憶える。
こうやって。
俺に教えられないことが増えてきて、いつか二人のいく道が、
別れる日もくるのかな。
そう考えるとちょっと寂しかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 47