アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2-61
-
昨日どんな会話があったかなんて、柴田から筒抜けだろう。なのに、「なんか」とかぼかすあたりが、どうしようもなくて、痛い。
気にしないでと言われて。はいそーですか、と引き下がるべきなんだろう。お互いの領域に踏み込まない、浅い関係なら。でもここは引き下がる場面じゃない。
「ミヤさんのこと。ゆっくりでいいんで教えて下さいって、いいましたよね。前に」
あの、キャッチボールした日。蒔田の脳裏に、あの日の深山の泣きそうな顔がよぎる。今もそんな顔をしてるんじゃないだろうか。
「過去のことは、いいんです。高村さんとか柴田先輩に言われたことも、ミヤさんが嫌なら忘れます。ただ---今、ミヤさんがどう思ってるのか教えて下さい」
噛み砕くように、優しく。エレベーターから降りてきたカップルの視線をよけて、隅っこの灰皿のそばで、小声で話す。
深刻な、それこそ別れ話でもしてるように見えたかもしれない。カップルの男の方が、一瞬、蒔田の方をを見て、すぐに目をそらせた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
109 / 360