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茜色の章16
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がっくり肩を落として凹んだ風の四十九院を眺めて、またチクリと胸が痛んだ。けれど、かわいそうだからと付き合う訳にはいかないし、そもそもこれは今だけの感情だ。
けれど友人としてなら一緒にいても構わない、どころかきっと楽しいだろう。むしろ、このまま進化し続けたら四十九院の方が雨宮から離れていく筈だ。
雨宮を取り巻く環境は重いし、自分が面白い人間とも思えなかった。
四十九院を元気付けようと、この間雨宮が河原に行くまで悩んでいたあの喫茶店に二人で行って冷たい飲み物でも奢ってやろうかと考えていると、急に元気を取り戻したらしい四十九院がぐいぐい話しかけてくる。
「雨宮!俺、雨宮と同じやつの色違い買ったんだ。雨宮の電話番号教えてよ」
四十九院がスマホを取り出してきた。
見るからに嬉しそうな様子に、構わないと二つ返事で同意して自分のスマホを出した。
これで連絡がいつでも取り合える事になった。
操作を教えてお互いの情報を交換し終えると四十九院は至極上機嫌で、実験と言いながら10メートル程走って離れてすぐに電話をかけてきた。
「もしもし〜雨宮聞こえる?」
「…はいはい。」
「雨宮、好きだよ」
「あー、わかったわかった」
暫くはひよことか仔犬だと思って付き合おう、そう決めた途端色々吹っ切れた。電話を切って強制終了すると四十九院が走って戻ってくる。取り敢えず、電話の操作は出来そうだとわかって次はメールを覚えて貰おうと喫茶店に誘った。
四十九院は凄く喜んだ。
この辺は良く知らないから、当初の予定通りこの間利用した店に行く事にした。隣にピタリとくっ付いて並んで歩く明希は楽しそうだし、健康的で普通に見える。
「友達とどこか行くって楽しいね雨宮。」
「まぁ、そうかもな」
考えてみれば何かをする時一人じゃないのは雨宮にも新鮮だった。自分の為に何かするとか楽しむなんてこれまで頭に無かった。いつも死者を避けながら、頭部を黒い靄に包まれた人物を暗い気持ちで眺めて来た。
ところが、今やっているのは余りにも普通の事だった。
不思議と気持ちが軽い。
喫茶店に着くと、何時もなら奥の目立たない席を選ぶのだが今日は窓際の明るい席を選んだ。
四人掛けのテーブルで隣に座ろうとした明希を制止して真向かいに誘導し座らせた。アイスコーヒーを二つ頼んで、届くまでの間に取り敢えずこの先必要になるIDやパスワードを設定するのを手伝い大切に保管するよう言い含めてから、文字の打ち方からメールの仕方、便利なアプリを幾つかダウンロードし、最後にラインでグループを作るところまでやった。
四十九院は物覚えが良く、何でも吸収してゆく。
もしかしたら受け身の霊能力が関係あるのかもしれないと興味深く眺めた。
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