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呂色の章3
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(……………!)
自分の深いところに雨宮が触れ胸の中心から暖かい光が溢れるのを見た。ドッペルゲンガー(二重存在)のように現実と精神世界で同時にそれぞれ行動出来る四十九院の魂に起こった変化は、現実世界の自分にも影響を及ぼして視界を変えた。
テーブルを挟んで向かいに雨宮の肉体があるが、身体の中心に雨宮の心があって力を発しているのを感じる。その力は精神世界と物質世界を四十九院の視界を通して一つにした。
今、四十九院は霊的視界で物を見ている。
喫茶店を見回せば、店内にいる人間が透けて見えた。人間は赤や緑や青、黄色……そういった特定の薄いオーラを放っていた。それに植物や木材にもオーラのようなものが見える。命を宿しているもの、またはかつて宿していたもの、それらが波形や色を放っているのだ。
鉱物などの金属にも光が見える。ところが人間が作り出した自然界にはなかった物質、プラスチックなどの樹脂類は真っ黒で波動は無い。
勿論、1番強く輝くのは目の前の雨宮だ。
この光が魂の力だとしたら雨宮のそれはもはや人では無い。
虹色と黄金の輝き。
この光は唯一無二だ。
四十九院はうっとりと眺める。
逆に今まで見えなかった者も見えた。
霊魂だ。
この喫茶店の自分達の席の斜め奥にレインコートの男がいる。
さっきまで居なかった、いや、見えなかった。
季節外れの服装で、服のセンスも古臭い。何より全身がぐっしょりと雨に濡れているのだ。
黒くくすんだ寒色系の色。
窓から明るい通りを見れば、そんな色の人物を何人か見て取れた。うなだれた日本帝國軍時代の片足の無い兵隊が電柱の下に佇んでいる。
道を迷っている風の老婆が窓の右手から左手に歩いて行く。
数分後、また同じ老婆が右から左へと。
延々と同じ行動を繰り返していた。
雨宮にはいつもこんなものが視えているのだ。
気持ちの良い美しいものばかりでは無いとわかって、四十九院は雨宮を想い切なくなった。
店内のレインコートの男は雨宮の発する力に押されるように席を立つとスーッとテーブルや椅子、カウンターとすり抜けて壁際まで後退した。
どうやらこの力は霊にはキツイらしい。
そして、ふと気づけば、蟻の気配が無かった。
占領者を追い払うのに成功したらしい。喜んで、もう起きてと現実の雨宮に触れ優しく揺する。
ところが、雨宮は起きない。
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