アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
不言色の章9
-
「先生、あのさ…俺、多分病気じゃなかったんだ。ぼんやりしていてはっきりとは覚えてないけど…前に、蟻の話をしたよね?」
私が頷くと四十九院明希が話を続ける。
「あの蟻は、俺じゃない誰かなんだ。この街に越してきてからアレが出るようになった。俺は頭に入ってくる奴らの事を占領者って呼んでたんだ。今までは、占領者も俺が作り出しているんだって思ってたんだけど、違ったんだ」
「四十九院さん、貴方がそういう結論を出したのは…お友達の雨宮さんとの出会いがきっかけなのかしら?」
「そう!雨宮は凄いんだ。」
「では、雨宮さんの事を話してくれる?」
雨宮、と自分で口にするたび、四十九院明希の表情はぱっと明るくなる。彼が絶大な信頼と好意を寄せている人物に興味があった。四十九院明希の症状は今まで見てきたSoulケースとは明らかに違う。患者が悪魔だ霊だと騒ぐと嗅ぎつけて来る、霊感商法の自称霊能者や新興宗教の人間には幾らか会ってきた。
けれど、今の所リリー以外に霊能者と呼べる人間には会ったことが無い。四十九院の劇的な変化を見る限り、雨宮という人物は本物である確率があると思っている。
「雨宮とは家の近くの河原で会ったんだ。俺は先生の治療を受けた後で…あの時は頭を蟻に占領されて消えかけてたんだ。俺は…というか、蟻は雨宮の頭を潰そうと思って近づいてった…。雨宮を突き飛ばして大きな石拾って頭に…でも、投げる瞬間雨宮が俺の名前を叫んだ。そしたら、俺の意識がちょっとだけ戻って石の軌道を変えたんだ。」
「続けて、四十九院さん。」
「…俺は雨宮の頭を潰さずに済んだ。で、いきなりなんだけど、雨宮は俺の頭の中に入って来たんだよ!雨宮は凄く綺麗な色をしてた。眼は虹色で…身体も虹と金色の光を合わせたような色を発してた。それから凄く大きくて綺麗な模様が雨宮と空を繋いでるんだ。それでね、俺は頭の中に避難場所を作ってたんだけど、そこにまで蟻が来ちゃって、俺の体を真っ黒な蟻が覆って…あーもう駄目なんだ、って諦めたら雨宮が手を握っでくれて、生きろって。そしたら雨宮の色が俺の世界にばーって広がって蟻が灰になって消えちゃって。それから頭がスッキリして…。」
「その後、雨宮さんはどうなったのかしら?」
「一旦俺から出て、…あ、雨宮の話をした事は内緒だよ先生。雨宮は、能力の事隠してるんだ。守秘義務があるから大丈夫だと思うけどさ。雨宮は俺も能力があるって。でも、それは受信する感じの能力で…あと触媒だって言ってたかな?その後、俺の事調べる為に頭に戻って来た時、穴まで案内した。蟻が入って来た穴だよ。その穴が俺と蟻を繋いでるんだ。」
四十九院明希の話を意外にもすんなり受け入れられた。
雨宮という人物がリリーと同じ…もしくはもっと強い存在なのではとも思っている。それに、四十九院明希自体も能力者…。私は俗にいう霊媒体質というものだろうかと考えていたのだが、近からず遠からずだったようだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
148 / 159