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歩が去って拓海と2人きり。このまま2時間目もサボるのは決定だが、それよりも今はこっちの方が大事だ。
「拓海、さっきの続き教えて」
「リカちゃん先生が慧の家に行ってたのは知ってるんだよな?」
コクンと頷く。内心ではなんで拓海が知ってんだよって思ってても黙った。じゃないと続きが聞けなくなってしまう。
「それさ。もしバレそうになったら俺たちで理由つけて内緒にしてろって言われた。実は慧のお母さんと先生が会ってたことも知ってる」
「あの人のことまで?!」
俺は全然知らなかった。てっきりリカちゃんが浮気してると思ってたのに…マジでなんで拓海が知ってんの?
「だってどう考えても変だろ?今までちゃんと帰ってたリカちゃん先生が急に遅くなるんだもん」
「そう、だけど…」
「結局はなんか上手くごまかせそうだからいいって言われたけどさ。俺、どうやってごまかすか理由すげぇ考えてたのに!」
拓海が頬を膨らませるけど正直それどころじゃない。
あの時、俺が2人に相談してたらリカちゃんを疑わずに済んだ。変に意地張ってなきゃリカちゃんを試すような真似せずに済んだのに、俺は2人に知られたくなくて隠してた。
それを今になって知る。
「先生がどうやってごまかしたのか慧は知ってる?」
「いや…まあ、それはいいんだ」
まさか浮気してるしてないで揉めたなんて言えずに拓海に話の続きを促す。
「リカちゃん先生が慧のお父さんと何話したかまでは知らない。俺たちは慧にバレないよう黙ってただけだよ」
「そうなのか?じゃあさっき歩が言ってた普通なんかじゃないってなに?」
拓海が俯いて悩む。けれどすぐに顔を上げて俺を見た。もう全てを言うって顔をしている。
「今回だけじゃなくて慧が実家に帰った時も俺たち連絡すんなって言われてたんだよ。慧には家族と向き合う時間がいるからって…ちゃんと1人で考えなきゃって」
あの時はリカちゃんからの連絡で頭が一杯でそんなこと気にもしてなかった。言われてやっと気付く程度だ。
「進路のことも慧から言い出すまでは触れないでやってくれって言われてた。慧は追い込まれると嫌になって逃げちゃうからって…俺たちは逃げ場所になってくれって言われた」
「逃げ場所ってなんだよ」
「だって歩はキツい事言うじゃん。それで慧とケンカしたら、慧は他に頼れる人いなくなるって。
リカちゃん先生じゃダメなのって聞いたら、俺は悪者だからって笑ってたよ」
「悪者…」
父さんの時と同じだ。自分が悪者になるから、それのフォローを周りに頼む。そうやってすれば俺には逃げ道があって、頼れる人がいて1人じゃなくなる。
リカちゃんがいなくなっても誰かが傍にいてくれる。
「俺と歩が頼まれたのは、いつも通りいること。バカみたいなこと言って笑っていられる時間を作ってほしいって。それは先生じゃできない大切な事だからって…」
「それが歩の言う普通じゃないってこと?」
「多分ね。だって自分は好きな子に嫌われるかもしれないから、そのフォローしてっておかしくない?
俺なら嫌われるようなことしないもん。逆がいい」
俺を突き放す裏で俺を助けてくれる存在を作る。リカちゃんは始まりから終わりまで計算して動いてくれてる。
嫌な役は自分が引き受けてしまうのがリカちゃんだ。
父さんにしても、歩と拓海にしてもそう。自分以外を悪者にしない方法をとろうとするのがリカちゃんなんだ。
「でもさ、今回ので思ったんだけど!慧のお父さんに話すって言った時のリカちゃん先生、すっげぇ真剣な顔してた。学校で先生見るじゃん?そしたら疲れてるんだなってわかって、歩と2人で心配してたんだよ」
なんで俺が気付かなかったことに拓海は気付くんだろう。俺の方がリカちゃんとずっと一緒にいてリカちゃんを知ってるのに。
「アイツ秘密多すぎだろ」
そう言った俺に拓海が苦笑いを浮かべる。それは少しだけ大人っぽく見えた。
「リカちゃん先生はさぁ…そうやって周りに頼ったこと慧だけには知られたくないんじゃないかな」
「なんでだよ」
「だって慧の中でリカちゃん先生は何でも出来て、何でも知ってる人だから。リカちゃん先生は完璧な男になりたいってずっと言ってたからだよ」
なんでリカちゃんはそこまで完璧にこだわるのか。その理由が少しずつわかってきたような、でも気付きたくない俺がいる。
俯く俺に拓海は時間を確認した後話しかける。
「慧はさ、リカちゃん先生になんて言ったの?ちゃんと話できてないから何もわかんないんじゃない?」
「俺は……」
拓海にリカちゃんとした話を思い出しながら伝えた。
「こんなの言いたくないけど」
拓海は言い辛そうにして、でもハッキリと言った。
「慧は酷いヤツだな」
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