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家庭訪問の後、楠見先生との距離が一気に縮まった。
近頃では、昼休みに体育館の裏で先生の寝ぐせを直すのが、ボクの日課のようになっている。
「楠見先生、また寝ぐせ頭で学校に来て!」
先生用に購入した寝ぐせ直しのムース(ボクの髪はまっすぐでくせがつかないので、必要ない)をつけながら、つい口うるさく言ってしまう。
先生はボクよりも20センチほど背が高いので、ボクは思いっきり背伸びをして先生の髪を直さないといけない。
頭を下げてもらっているけど、それでもまだ高い。
「ごめん、寝坊した。……目覚まし止めて、また寝ちゃったよ」
「楠見先生のことだから、そんなところだと思ってた」
「そんなところって、どんなところだろよ?」
「だから、そう言うところ」
先生が楽しそうに笑っている。
その笑顔を見るのが、ボクは何よりも好きだ。
いっしょにいると楽しい。
あの2人以外で、唯一気どらなくていい相手だった。
それは先生にとっても同じで、ボクが先生の居心地のいい存在なんじゃないかと決め込む。
「沢田は、お母さんみたいで手厳しいな」
居心地がよすぎて、お母さんになっちゃったよ。
それって、恋愛の対象にはならないってことかな?
ボクは男の子だから、元々、恋愛の対象でもないか?
ツキンと胸に痛みが走る。
切ない。
好きだと自覚する前から、楠見先生の姿を目で追っていた気がする。
いつも見ていたから、放っておけなくなったのか?
放っておけないから、いつも見ていたのか?
どちらか分からないけど、先生から目を離せなくなった。
だから、いろんなことに気づいてしまう。
先生は自分のことには無頓着で、ひどい寝ぐせ頭で学校に来たり、ときどきシワシワのシャツを着ていたりする。
好きな人にはちゃんとしてほしい。
だから、お母さんみたいに口うるさくなってしまった。
嫌われるんじゃないかと心配になるけど、言わずにはいられないのが、ボクの悪いくせだ。
その半面、いまのままのだらしない先生でもいいと思う、自分がいる。
先生が格好よくなって、その分ライバルが増えるのも嫌だ。
ボクの気持ちは複雑すぎて、自分でもまったく理解できなかった。
先生にとって、ボクはただの生徒なの?
それとも、お母さんの代わり?
ボクには先生しかいない。
先生だけだよ。
いつかこの気持ちを、伝えられたらいいのに……。
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