アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
目の前が真っ黒になった。
膝から力が抜けそうになるのを何とか踏ん張り、ふらふらとした足取りで教室に戻った。
「拓海、顔が青いよ。どうかした?」
「どうした?」
ユウくんと知紀くんが心配して聞いてくれるほどだから、教室に戻ったボクの顔からは血の気が引いていたのだろう。
それに、先生の後を追いかけたのを2人に見られていたから、楠見先生と何かあったと思ったに違いない。
いつものボクなら、2人に心配をかけないように平気な顔をしていたと思う、
だけど、いまはうまく取り繕うことができない。楠見先生が態度を豹変させたことがショックで、何も考えることができなくなっていた。
「ううん、なんでもない」
と答えてから、親友には嘘をつかないことにしたんだった、と思いだす。
言葉とは裏腹に、ボクは動揺しまくっていた。
「ボク、先生に嫌われるようなこと、何かしたかな?」
独り言みたいに、言葉が口をついて出ていた。
「……それは、大人の事情ってやつなんじゃないのか」
それまで黙って聞いていた知紀くんが口を開いた。
――やっぱり、そうなんだ。
ボクも、そうなんじゃないかな、とはなんとなく思っていた。
気分が一段と落ち込む。
「大人の事情って、何?」
ユウくんは、子どもらしい疑問を口にする。
3人の中で身体は一番大きいけど、中身は12歳らしい無邪気さがあって可愛いらしい。
一人っ子のボクは、勝手にユウくんのことを弟のように可愛く思っている。
「えっと、大人の事情ってのはだな……拓海、何だっけ?」
知紀くんは困ってボクに助けを求めてくる。
「何だ、知紀も知らないのか」
ユウくんが呆れた。
「拓海に辞書を借りろよ!」
ユウくんのツッコミが、ボクにとどめを刺す。堪えきれずに、とうとう吹き出してしまった。
「本当だ。大人の事情って何だろうね」
やっぱり持つべきものは友だ。2人のおかげで、沈んでいた気持ちが軽くなった気がした。
ボクは痛むお腹を押さえながら、今日あった出来事が消えてなくなったみたいに笑っていた。
それでも、胸に突き刺さったとげみたいなものがとれることはなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 90