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戸惑い(シローside)にしおりをはさみました!
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戸惑い(シローside)
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誰も寄せつけない空気感。
青い目は氷のように冷たく、人形のように綺麗な顔を鉄壁の無表情が覆っている。
「スカーレット家の執事の、ルイだ」
差し出された白手袋越しの手を握る。
「ローズウェル家、執事のシローです」
立場は変わらないはずなのに、なぜか敬語になった。
人を従わせずにはおかない空気感に、自然と背筋が伸びる思いがした。
大して年上には見えないにも関わらず、威圧感には目を瞠るものがあった。
隙がない。
武術は一通り極めてきたつもりだが、まったくもって、倒せる気がしなかった。
意識が絶えず拡散と集中を繰り返し、広範囲をくまなく覆っている。
仕事ぶりを見なくともわかる。
この男は有能だ。
それも、相当に。
刺さる重力のある視線を必死に受け止めながら、けしてみっともなく引くことだけはすまいと、背筋を正した。
「……なるほど。主が気に入るのも、わからなくはない」
やがて、ルイの目がほんの少しだけ、和らいだ。
「こちらの視線を、目を逸らさず正面から受け止めた。かといって、偉ぶる様子もない。姿勢も筋肉のつき方もいい。緊張下において、呼吸を深く保つ基本もできている」
「……ルイ! おまえはまた、人様の家の執事殿をイジメるんじゃないよ」
不意に扉の向こうから現れたリンに、ルイが場所を譲りながら、慇懃無礼な礼を返す。
「人聞きの悪い。面白い子が来るから出迎えてくれと、先に焚きつけたのは、あなたでしょうに。わたしの目に敵うか、知りたかったのでは?」
「まぁな。うちで引き取ることになった場合、おまえと相性が悪いと最悪だ。で、彼は合格だろう?」
「そうですね、鍛えればものになりそうです」
勝手に進められる話に、慌てて割って入った。
「わたしはローズウェル家の執事です。こちらでお世話になるつもりはありません」
「そのことなんだが、話がある」
どういうことだ、引き抜きの話か?
ならば、今すぐここで踵を返すべきだが、思い出す限り、リンは自分がリューに仕えることに賛成していたように見えた。
「日暮れまでには返すから、警戒せずに、とにかく話を聞いてくれ」
こちらの戸惑いを察してか、リンが言葉を継いだ。
策略は得意そうだが、目下の者に対して卑怯な真似をするような男には思えなかった。
「……わかりました。上がらせていただきます」
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