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進む想いと後退する想いにしおりをはさみました!
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進む想いと後退する想い
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俺のせいだ…だから…
「俺、見に行きます。」
「ちょっと待て!君のせいで雄大君は傷ついたんだ!」
加藤が辰成の腕を掴んだ。
「そうですよ!だから俺が責任を持って彼の面倒を見ま…」
バキッ!!
顔の骨が折れたかと思った。
強い衝撃が頭まで響いた。
きゃっ!
という声が上がって、気がついた時には小さなサンタ達はバラバラに床に落ちて、自分はその真ん中に尻餅をついていた。
「くっ…」
右頰が熱を持ったように熱く、痛かった。
(口切ったな…)
血の味が口の中に広がる。
辰成はフラフラとしながら、立ち上がった。
「何…するんですか!?」
「雄大にはもう近づくな!」
へっ!辰成は笑って切れた唇を手の甲で拭った。
「近づくな…言われなくても椿さんは年内でここを辞めるんだよ!」
「な、なんだって…?」
加藤が衝撃を受けたように立ち尽くした。
辰成はうおおっ!と隙のできた加藤に殴りかかった。
バシン!
辰成の右拳が、大きな音を立てて、加藤の左頬に綺麗に入った。
ガッシャン!
加藤がメタリックの棚に身体をぶつけた。
辰成ははぁはぁっと肩で息をした。
するとゆっくりと加藤の身体が動いた。
「….それ…本当なのか…」
辰成は息を整えるように大きく深呼吸した。
「椿さんが辞める事?あぁ…あんた知らなかったのか?」
「….…」
そのバツの悪いような加藤の顔に辰成は噛みついた。
「あぁ…そうか!あんた、椿さんとは別れたんだよな!そうだよ!あんたと別れたせいで、椿さんはここを辞めるって言い出したんだ!全部、あんたのせいだ!うっ!」
加藤が辰成の胸ぐらを掴んだ。
「う、上村君!あっ…加藤さん!?」
店長があたふたとやって来るのが見えた。
しかし、その前には目を釣り上げて、ギリギリと自分のシャツを握り締める加藤がいる。
「だからって、お前が雄大にした事が許させると?」
「…許されなくても…俺は…椿さんに想いをぶつけたかった!」
「想い?欲求だろう?」
辰成はかっとしてして、加藤の手を振りほどいた。
「そうでもしないと椿さんは振り向いてくれないんだ!」
想いが込み上がって、泣きそうになるのを拳を握って耐えた。
加藤は何かを考えるように下を向いていたと思ったら、下を向いたまま、口を開いた。
「….…雄大君はリセットするために、辞めるんだろう?」
「……?」
「だったら、その気持ちを優先させるべきなんじゃないのか?」
辰成はグイッと顎を上げた。
「大人な意見のようだけど、それはあんたが安心したいからだろう?」
「リセットして、幸せになって欲しい。」
「はっ!そんな人任せな…だからあんたは椿さんに逃げられたんだ。あんたの気持ちが見えないから!そうだろう?あんたは人に幸せになって欲しいしかいえない、負け犬なんだよ!」
「……」
「俺は違う。何度だって…何度だって追い続ける。」
辰成は顔を手で押さえて、その場を離れた。
(何も言い返せなかった…)
成康のそばに青い顔した店長が小走りで近づいて来た。
「加藤さん、上村君と何があったんです?」
見渡すと周囲にぐるりと人が集まり、一定の距離でこちらを見ていた。
上村を殴った拳が痛い。
「俺は…俺は……」
自分の今の行動と思考が合致せず、成康はその狭間わなわなと震えがきた。
離したものの代償があまりにも大きい事に堪え兼ね、成康はその場に手と膝をついた。
「う、うわぁーーー!」
一体俺はどうしたいんだ?
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