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ナキムシロボ前編 カラ松
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ナキムシロボ
夕暮れの中家に帰るために並んで歩く兄弟の後ろを見て自分が何者か分からなくなった。
こっそりあとを付けるように同じ道を歩く
松葉杖が道路のくぼみに引っかかりカランっと音を立てて釣られて転ぶ
音に気づいた十四松が振り返り駆け寄ってきた
「カラ松兄さん大丈夫っすか??」
「なに?転んだの??アホだねぇ」
「もうちょっと下見て歩きなよ。」
「第一そんな包帯グルグル巻で外出るなよ」
「…………」
おそ松、トド松、チョロ松、そして何も言わず鬱陶しそうにカラ松に目をやる一松
「ふっ、すまない。ブラザー。どうしても心配でな。ノープロブレムだ。気にしないでくれ」
何でもないように。いつもと同じように。そう自分に言い聞かせながら言葉を告げた。
「うっわ!!いったいねぇ!!」
「うざい。ほんとうざい。やめてくんない?従来の場で」
勢いよく近寄ってきた一松に胸ぐらを掴みあげられた
「す、すまない。」
「もーいいよ。一松兄さん、十四松兄さん帰ろー、おそ松兄さんとチョロ松兄さん行っちゃったよー」
そう告げ歩いてくトド松のあとを追うように一松が歩いていく。困った様に十四松がカラ松とトド松達を何度も交互に見る
「大丈夫だ。俺は寄るところがあるから先に帰っててくれ。」
大丈夫。と笑いながら言えば素直に頷きトド松のあとを付いていった
痛む体を起こしふらふらと近くの公園に歩いていく。缶コーヒーを買いベンチに腰掛ける。
時刻はトド松達と別れてから既に1時間が経っていた
ぼーっと座っているとあることを思い出した。この公園は小さい頃6人でよく遊んだ公園だった。
大人からすればさほど大きくもない公園。遊具なんて小さなブランコと滑り台、鉄棒、それに子供用のアスレチック遊具と花と時計のオブジェが置いてある小さな丘。
小さい頃トド松がアスレチック遊具の吊り橋を怖がっていた。けれど兄弟みんなが進むせいか怖いのに自分も行くと言って聞かなかった。その度カラ松がトド松の手を握り一緒に渡っていた。
『お願い!兄さんお願いだから手今だけは離さないで!!』
懐かしい。小さな声が漏れた。
淋しい。いつの間にか涙が溢れ出ていた。
誰にも気づかれるはずないのに。気づいてくれる訳ないのに。
カラ松は自分の手を見ながら小さく呟いた
「皆と遠くなったら、俺はどうやって歩けばいいんだろうな…」
泣くもカラ松の心の傷なんて誰にもわからない。本人すら気付いていない傷なのだから。
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