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海へ出た初夏の旅16にしおりをはさみました!
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海へ出た初夏の旅16
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(葵語り)
先生の実家へ戻り、春子さんに謝った。心配かけたのと、お父さんの誕生会へ参加できなかったこと。ちょうど朝ごはんの時間帯だったので、春子さんに促されご相伴にあずかることにした。先生と並んで座り、家族になったみたいな錯覚を覚える。いつか俺が熊谷性を名乗る時が来たら、こんな風景になるのかと甘い夢を見た。
夢を見るのは自由で、俺の頭の中は誰にも邪魔されない。伊藤家とは違うお味噌を啜りながらそう思った。熊谷家のほうが俺の好みだ。出汁がよく効いていて、ほんのり磯の香りがする。
「葵君、またいらっしゃいね。今度はゆっくりお話でもしながら、ご飯食べましょう。祐樹がバカなことをしなければ昨晩も誕生会が一緒にできたのにねぇ。あのことを内緒にしてたなんて、我が息子ながら最低だと思うわ。もっと怒っていいのよ。引っ叩いたり噛み付いて躾けなきゃ。」
「はははっ……まぁ………」
何故母さんが知ってるんだと、先生が目を丸くして驚いている。恐らく雅人さん経由だろう。雅人さん、相当悔しがっていたから、せめてもの反撃で春子さんに告げ口したんだ。先生も雅人さんもお互い様だよ。
久しぶりに会ったお父さんは無愛想で、だけど俺には何にも言わなかった。否定も肯定もしない。お父さんからは悪い念は感じなかった。これは見守ってくれていると、自分勝手に解釈する。帰り際に挨拶すると少しだけ笑ってくれた。
「さぁて、帰ろうかと思うんだが、実はものすごく眠い。どっかで休憩しないと保たない気がする。どうしたらいい?どうしたら無事に帰れるかな。」
昨日は結局、先生も俺も寝不足だ。運転してもらうのに助手席の俺が寝てはいけないと、目を擦っていた時だった。車は海岸線を走っている。あんなに行きたかった海は睡魔と疲労により霞んで見えた。
「俺もずっと眠くて休憩がしたい。2人が寝れるような、ついでにシャワーも浴びれるような場所ってあるのかな。あ、まさか……」
「そう。そのまさか。今すぐ気軽に入れる休憩所って一箇所しか思いつかないだろ。」
「ラブホテルだ。いいの?行きたい。」
「あんまり行ったことないもんな。普段は行く必要が無いというか。もうすぐホテル通りに出るから適当に入るぞ。」
「えー、どうせ行くならお風呂が広くて、綺麗なところがいい。」
「女子みたいなこと言ってんなよ。男はヤれればいいんだって。」
そして、右手を上からギュッと握られた。
眠いよりヤりたいということに、会話の最後の方で気付く。なんだよ。普通に言ってくれればいいのに。先生の左手を握り返しながら、やっぱりこの人じゃなきゃ駄目だなと思った。
ガツガツ欲しがるんじゃなくて、さり気なく求めてくれるのが俺の性に合っている。
「雅人さんがね、先生以外の人として、改めて先生の良さに気付くこともあるって言ったんだよ。」
「ふーん……それで?」
「行為に幅を持たせるために、雅人さんとやったほうがいいって。バリエーション豊かになるって。よく分かんないけどそういうものなのかな。お店じゃないんだから、必要なくない?」
「うーん、まぁ、雅人の言うことも一理あるだろうが、俺には関係ない。なら、葵にとってセックスって何?」
突然の質問に、眠気に占領された頭を回転させる。俺にとってのセックス。なんだろうか……
「うーんと…………あったかくて、気持ちよくて、幸せなこと。先生が俺のことだけ見ていてくれる、独り占めできる時間かな。」
身体を合わせている時、その場には裸の人間か2人しかいない。シンプルでだけど、とても濃いやり方で、人は愛を確かめ合うのだ。好きな人と抱き合うだけで脳は快楽を拾う。
「ぶっ、可愛い事をあまり言わないように。煽っても何も出ないよ。独り占めっていつも葵を1番に優先してるけどなー。雅人はよっぽど葵としたかったんだろう。嫉妬も入ってる気がするが。おっ、ここに入ろう。」
比較的綺麗なラブホテルに車は入っていった。
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