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ハミドのクリスマスプレゼント④にしおりをはさみました!
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ハミドのクリスマスプレゼント④
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「えっ、ブラッド…どうしてここへ?」
俺は仙台の病院を訪ねていた。
今日は聖夜の前日、天皇誕生日だ。
明治天皇は戦争中、国民が白米を食べられないのに朕が食すわけには行かぬと家臣と共に麦飯を食べ、毎日軍服を着て生活していたそうだ。
昭和天皇は戦争に反対しながらも無能な政治のせいでやむなく開戦し敗戦国としての責任を取らされそうになった。
と言っても本人はマッカーサーに謁見した際、朕の首一つで何とか国民を救えと死ぬ気満々、責任取る気満々で挑み嘆願したと言うから、その覚悟たるや凄まじいものがある。
当時、マッカーサーはてっきり助命を乞いに来たと思ったのに、これが侍日本の姿かと、負けてなお誇り高き国民性を垣間見たそうだ。
日本のダンディズム白洲次郎も、やはり敗戦のあとアメリカの高官に会った際、天皇からの土産をそこにおけと部下に命じ、床に直接置いたのを見咎めて抜刀せんばかりの勢いで激昂したという。
「畏れ多くも陛下から下賜されし者を、地べたに直接とは何事だ!そこに直れっ」
慌てて机を持ち出しこれでいいかと伺いを立てるほど高官に気を遣わせ、ようやく納得させたというし、天皇のカリスマ性は戦争に負けた位では揺らぐ事など全く無いことを知らしめた。
今上帝に至っては、戦争こそ無いものの高齢を理由に退陣したくてもブラック企業よろしく引退させて貰えないらしい。
現人神ではないと人間宣言したにも関わらず、その、神秘性は損なわれる事もなく変え難い日本の宝だと言うならばもう少し人として大事に、扱えば良いのではないかと、いつも複雑な気持ちで見ている。
世界的に見ても天皇家のルーツは古く、日本の象徴という立場でありながら、大晦日から三ヶ日まで、国民の平和と安寧を願う祈祷を今尚続けている神道の頂点に立つ宮中祭祀も兼ね、日本の外交で最も強いカードでありながらとにもかくにも先祖代々不憫だ…と、こういう事をもし日本で言うと、右の何とかにされるらしいので、自重しよう。
さて、話を戻そう。
俺に名を貸してくれたブラッドは呆れていたが、こんな日に子供の笑顔を見なくてどうする?と顔を見ると1人で行ってくださいよとばかりに仙台の病院に問い合わせてくれた。
目の前に現れた俺にびっくりするタクマを前に幽霊ではないぞと笑わせて、病室にある椅子を引きずって来て座ると以前よりも元気は無いが、顔色は良かった。
「クリスマスだからな。タクマの為にオセロをプレゼントにしきた。俺がオセロを指しにタクマの所へ遊びに来るのはこれが最後だ。身体が動くようになったら、俺の学校に会いに来い。」
そうして二人で少しの時間オセロをプレイすると、別れ際、タクマは泣いていた。
「ありがとう…。ブラッド。俺、手術前で不安だったから、ブラッドとオセロ出来て良かった。頑張ってくる。」
「努力は素晴らしいものだ。俺はクリスマスプレゼントを貰う為、残りの364日を頑張れる。」
「ブラッド位大きくなっても、サンタさんが来るの?」
タクマが泣くのを止め、不思議そうな顔をするので、内緒だぞと顔を近づけた。
「俺のサンタは、女神なんだ。お前ももっと年を重ねたら解って来るかもな。」
タクマにもピンと来たようで、いいなぁ、ブラッド…と言われた。
「もし、手術が成功してブラッドに会いに行ったらその女神様も見せてくれる?」
「女神は気まぐれだからな、どうかは分からんが考えておく。」
病院を後にして、東京に帰る新幹線の中でやっとクリスマス最後の仕事を終えた気がした。
シオンがいつもしているボランティアは、俺がすると偽善的で馴染まないように思うが、タクマとの交流は楽しいものだった。
タクマの手術がうまく行くよう祈りながら、クリスマスにする手術はきっと成功するだろうと思った。
何せ聖夜だ、不思議な力が働いてきっとうまく行く。
それからタクマが手術を成功させ、リハビリを経て東京に戻るのはもう少し先の話だ。
終わり。
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