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用意、スタートにしおりをはさみました!
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用意、スタート
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「ここでこの公式を当てはめれば解が出るので………おい矢代ー、寝るなー」
矢代に呼びかける先生の声を聞くのは、この時間だけで何度目か。
昼休みが終了し、5時間目の授業が始まろうとしたギリギリのところで、矢代は教室の扉を開けた。約束を守ってきちんと出席したが、奴は奴でそれなりの対策をとってきやがった。
教室に入った際、案の定いつも絡んでいる不良たちに声をかけられていたが、それを「寝る」という一言で一蹴し、自席についたと思えば、顔を両腕で覆うようにして机に伏せた。
教卓の真ん前であるのに、いい度胸である。
席替えをする日も、矢代は無断欠席しており不在だったため、不良仲間の悪ふざけにより、矢代の席は空いていた教卓の前になってしまったのだ。
俺は裸眼でなければ授業に支障はないので、丁度矢代の様子を窺えるような後方の席にいる。そのため、矢代が前方の扉を開き、自席に着くまでの全ての動作を見渡せた。
相手の服の下の事情を把握している人間から見たら違和感の塊でしかないが、可笑しいほどに、流れるような動作だった。
矢代は放課後まで顔を覆い、伏せ、全てを遮断して、リスクを限りなく低くするつもりなのだろう。
つまらない。
矢代の対処が気に食わなかったが、この不満はそのまま相手にぶつけられる。
数学の先生は不真面目な態度を取る矢代を度々注意したが、本人は至って無動作のままだ。きっと6時間目や休み時間も、これで乗り切る算段だろう。
はじめの10分はスイッチを入れずに焦らした。伏せて平静を装っているのだろうが、きっと不安を感じているだろう。そうさせている。
そろそろ遊び始めていい頃かもしれない。
俺は密かにポケットの中に左手を忍ばせ、そのままリモコンのスイッチをオンにした。
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