アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
【恋人にリンゴを】セリフお題②にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
【恋人にリンゴを】セリフお題②
-
セリフお題の第2弾
『あなたの指、気持ちいい』
熱い、と悟は感じた。
昼食を済ませると寒気が襲ってきたので、ベッドで休んでいたのだが、症状は悪くなっていた。ガンガンとする頭痛、身体中に重りがついているようにだるくて。
実は昨日、買い物をしている帰りに突然大雨が降ってきて、家に着く頃には全身ずぶ濡れ状態となっていた。すぐにシャワーで身体を温めたが、雨にあたっている時間が長すぎたのだろうか。
もうこうなってしまったものは仕方ない。悟が時計を見ると、ベッドで休んでからだいぶ時間が経っていた。ついでに外を見ると真っ暗で。レナードも、もうそろそろ帰ってくるかもしれないし、起きないと。昨日の夜にご飯を多めに作っておいて良かったと、少しだけ安堵する。
すると、玄関のほうから物音がして、レナードが帰ってきたのだとわかった。慌てて悟はベッドから出て玄関へ向かう。
「おかえりなさいませ」
「ただいま……? ん? やけに顔が赤くないか?」
レナードの着ているコートや荷物を預かろうとすると、その前にレナードが悟の異変に気づく。
「少し熱が出てしまって……」
「大丈夫なのか?」
とレナードの手が悟の額に触れた。
あ、レナード様の手、冷たくて気持ちいい……。なんてのんきに思っていると、すぐさまレナードのはっきした声が玄関に響く。
「これは少しどころじゃないだろ……! 昨日聞いた雨のせいか……」
大きめの声が頭の中に入ってきて、ぐわんと悟の視界が揺らいだ。
駄目だ。もう立ってられないかも。目頭を押さえて耐えていると、レナードが身体を支えてくれる。
「早くベッドへ行こう」
悟がこくんと頷いた途端、ふわっと身体が浮いた。
「レナード様……っ」
「こっちのほうが楽だ」
悟が慌てている理由は、レナードに姫抱きされているからだ。
確かに、歩くのは億劫だけど。こんな恥ずかしい思いをするのであれば、歩いたほうが断然マシである。
でも、──。
「……」
なにか言う気力さえ起こらない。結局、レナードの腕の中でぐったりとした悟は、おとなしくベッドへ運ばれる次第となった。
ベッドへ腰掛けて、ぼーっとレナードを見る。動いたせいか、身体がますます熱い。
「着替えとタオル持ってくる。凄い汗だぞ」
「ありがとうございます……」
釦を外していると、すぐに着替えが用意されて。それから着替えている間に林檎を切ってくれたから、不思議とレナードを見つめた。
不器用なくせに、いざという時は頼りになる。そんなの弱ってる時にだなんて、ドキッとしてしまうではないか。どこかヒーローみたいでずるいな、と悟は思った。
林檎の形は、うさぎ。これを覚えてから、だいぶ林檎の形が整ってきている。皮を全部剥くよりこっちのほうが簡単らしい。
レナードが林檎をフォークで刺し、悟の口元まで持っていく。本当は自分でやると言い返すところだが、なんせ姫抱きの時と同じように、そんな気力など残っていない。なので、そのままぱくりと口に入れた。
「美味しい?」
悟はこくこくと頷く。
その姿が可愛らしく、レナードは頬を染めて悟へ林檎を運び続けた。
林檎が食べ終わって、薬を飲むと悟はベッドへ横になる。
すると、レナードが頭を撫でてきて。体温が高い今の身体は、レナードの手がひんやりとして心地よさを感じていた。それに、髪を梳く感触が気持ちよくて、悟は目を閉じて受け入れる。
「レナード様の指……気持ちいい……髪、梳くの……」
「熱、上がってるな。冷やしたタオル持ってくるから待ってろ」
離れていく手を咄嗟に掴む。
「や。そのままいて……もっと触って……?」
熱で簡単に潤む視界。その瞳でじっと見ていると、レナードは小さく息を吐いて、再び髪を撫で始めた。
「そんな瞳で見つめないでくれ……」
そう言われても、どうすることも出来ない。
ただ、ごめんなさいとレナードへ視線を向けるが、目を閉じてと返されるだけだった。
「違うんだ、サトル。これでは生殺しだから……早く元気になるよう、おやすみ」
額にちゅっと口づけが降る。
レナードの手は優しい手つきで。指が髪に絡んで眠気を誘った。そんな中、空いた手のほうが悟の手を握り、さらに安心感が生まれる。この手は離れることなく、ぎゅっと繋がれて。
レナードがそばにいる。
これが決め手となり、悟はすっと再び夢の中へ入っていった。
翌日──。
目を覚ました悟は、額にタオルが置かれていることに気づいて、それを退ける。悟が眠ってから、レナードが置いてくれていたのだろう。時間が経ったそれは温くなっていた。
まだぼんやりするものの、昨日ほどではない。熱は平熱に下がったようだ。
「あ……」
ふと、手にある感触が気になって顔を向けると、昨晩繋いだレナードの手は解かれていなかった。
レナードは、ベッドの端に顔を伏せて寝ていて。それでは起きた時に身体が痛いだろうに。でも、愛されているのを感じて嬉しく思ってしまうのは、いけないことだろうか。
悟は、きちんとレナードが寝ていることを確認してから、こっそり頬にキスを送った。そして、レナードの肩を揺らす。
「レナード様、起きてください」
もちろん、このことは誰にも言えない自分だけの秘密だ。
End
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 101