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助言
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横目でスノウさんを確認する。いきなり話の渦中に巻き込まれたスノウさんは驚いてるのか、動揺してる感じがした。
「何故、彼に?」
『そこの者と其方の魔力は相性が良い。キリよ、分からぬか? 其方の膨大な魔力を、そこの者の魔力が包み込むように抱いておるのが』
そんな表現は初耳だよ。
良い具合に交じりあってるとかなら聞いたことあるけど。
『キリよ。其方は環境の影響か早くに大人の対応を要求され、それに応えて生きてきてる感じを受け取る』
大人の対応……、あながち間違いではない。
平和な日本から勇者になったのだ。それまでとは180度違う環境に慣れるため自我を押し殺して生きてきた。そうしないと、耐えれないかったから。
『これからも其方は膨大な魔力を持っているが故に、疑わられ妬まられ忌み嫌われ、苦悩が続くであろう。時には死を乞うこともあるかもしれぬ』
チート並の能力は脅威となる。だから、勇者をやっていた世界に居残ることが出来なかった。
この世界からも、いらない存在となるのは嫌だな。
『そして人間なのに魔力があることにより獣の本能を感じ、人間としての考えとの違いに心が割かれそうになるであろう』
それは分かる気がする。今現在、それで苦しんでるから。
『そういう時は、そこの者に甘え胸の内を晒すがよい。例え全世界が其方を排除すべき存在だと認識しても、そこの者だけは其方を必要とし、其方を癒し、其方を愛するであろう』
スノウが運命の番だから? それだったらアルだって……。
『我が言葉でいくら言うても分からぬであろう。1度そこの者の腕の中で眠ってみるが良い。そこの者は其方に唯一、心の安らぎを与えられる存在、それを感じれるであろう』
唯一……、何故彼なの? アルは違うの?
「ドンジェンさん、申し訳ないですが……、それ以上は口にしないでくれませんか?」
『ほぅ、そこの者よ。我に指図をするのか?』
「くっ……」
ドンジェンの威圧にスノウさんが呻く。それでも怯まなかった。
「彼を苦しませるならば……」
そう言い、剣を構える。どう見てもドンジェンの方が圧倒的に強い。
戦っても無駄死にするだけなのに。
『ふふ。そう怒るでない。我に立ち向かう心意気が気に入った。そこの者よ、今以上に力を得たら我に会いに参れ』
スノウさんにそう伝えると、ドンジェンはエンジェを背中に乗せ飛び立った。
「大丈夫ですか?」
「……」
俺は何も言えない。ドンジェンの言葉が頭の中をぐるぐる巡り回ってる。
「ドンジェンさんの言葉は忘れましょう」
どんな顔でそれを言ってるのか知りたくて顔を上げた。
今まで見ないようにしてたスノウさんは、まだ幼さが残っている顔をしていた。その顔は、悲しさや憂いさはなく、ただ優しく微笑んでいる。
どうして笑っていられるの?
ドンジェンの言葉を忘れろなんて、スノウさんを番とは認めないでいいということだよね?
運命の番に出逢ってしまったら離れられないんでしょ?
笑顔の彼の代わりに、俺の瞳から泪が零れ落ちた。
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