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まさか楓がそんなことを考えていたとは思ってもいなかっただけに、輝はその言葉に息を飲んだ。楓のことを知ったつもりでいたのに、何も分かっていなかった。もっと楓のことを見ていたら、自分に向けられていた気持ちに気づけていただろうか。
「僕……こんなこと言って気持ち悪いよね……引いたでしょ……」
「引くわけない。言っただろう、俺は楓が好きなんだ。確かに……他の子に触れたり『抱きしめて』と言われたらその通りにしていた……」
できればその言葉は聞きたくはなかった。悲しみで体が小さく震えていた楓に気づいた輝は、もう一度自分の方に引き寄せ強く抱きしめる。そしてそのままゆっくりと楓の耳元で、自分はどういう人間で人とどう付き合ってきたのかを正直に話した。
「俺は……今まで自分から人を好きになったことはなかった。でも、付き合っていくうちに、ちゃんと俺も相手のことを好きになれるかもしれないと思って、付き合い続けていたんだ……」
でもそうなることはなかった。人を思う感情が欠落しているせいで相手の思いも分かってあげることができず、結局はいつの間にか傷つけていて、大きな溝ができて続かないことが多かった。こんな自分のせいで彼女達の毎日にこれ以上意味のない時間を作らせることはしたくなくて、これからどうすれば良いのかを考えるため最近は距離を置いていた。そんな中で楓と出会い好きだと気づき、やっと「人を思う気持ち」がどういうものかを知った。
「それから……このままじゃ駄目だと思って、付き合っていた子にはちゃんと話をして謝って別れたんだ。でも……全てを清算しても俺がしてきたことは、きっと彼女達の中から消えないと思う……」
雅姫から輝の恋愛事情に関しては少し聞いていたが、大体はその通りだった。簡単にいってしまえば「モテる男は大変」ということ。でも輝は自分で自分の首を絞めていた。それが雅姫が言っていた「輝は誰にでも優しい」なんだと思う。その優しさは本当の優しさではなく、相手だけではなく自分も傷つけてしまう危険なもの。きっと無欲で感情の薄かった輝はそれが分かっていなかったのだろう。そんな輝が次に話したことが、最近良く目にしていた出来事だった。
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