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【終章】7にしおりをはさみました!
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【終章】7
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・・・・・
大佐は戦った。
あれから何10発……いや、何100発と。
他の景品には目もくれずに、ただひたすらペレのボールを目掛けて無数の弾を撃ち込んだ。
それでも箱は微動だにせず、まるでそこに固定されているかのように台から離れることはなかった。
大佐は手持ちの弾がなくなると、主人に金を渡す。
引き換えにコルクを受け取ると、銃に込め、再び右腕を構える。
弾は意のままに箱に当たった。
しかしそれで終わりだ。
こんなことを、もうかれこれ小一時間ほど繰り返している。
*****
その様子を見ていた王子様は内心がっかりしていた。
「(ソウゲツ......もうやめて)」
期待が大きかっただけにこの現実はつらい。
大佐が自分のために尽力していることは痛いほどよく分かる。
だけど、このまま続けた所でどうにもならないと思ってしまう自分がいるのだ。
王子様は前歯で唇をキュッと噛むと、切ない気持ちで床に目を伏せた。
と、その時だった……。
少年の背後を通りかかった客の一人が、不躾にもこんな言葉を口にしたのだ。
「へえー、まーだやってるよあの旦那。大したもんだ。どうせ取れないお宝に一体いくら貢ぐつもりだ? おい、どうする? 面白そうだからオレ達もちょっと見て行くか」
「……!!」
そのとたん、王子の中でプチンと何かが弾ける音がした。
すぐさま顔を上げると鋭い視線を男に向ける。
……お前たちには分からない!
こんな嘲笑にさらされて、なおも弾を撃ちつづける彼の気持ちは。
「(ソウゲツは言ってた。『心配するな』って……!)」
そうだ。彼は、何の考えもなしに戦いを挑むような人じゃない。
必ず何か勝機があるはずだ。
王子様はじわりと目頭を熱くした。
一時でも弱気になってしまった自分が恥ずかしい。
これではあの客と一緒じゃないか。
僕が信じないでどうするの?
「ソウゲツ……ソウゲツ、大丈夫だよっ! がんばってーっっっ!」
王子様がそう叫んだまさにその時。
大佐の口元が何かを確信したようにフッと弧を描いた。
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