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逃亡にしおりをはさみました!
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逃亡
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「あの厚紙の文字からして御守りは『彼女』から?」
「は、はい…。でも、貰った時に入ってたのは紙だけで、あの黒いのは無くて」
移動速度を落とさず問う南倉にユキトは狼狽しつつも答える。
あれが何なのか訊きたかったが少年は怖かった。探偵の態度から少なくとも良い物体では無いだろう。
「御守りを外す時はいつ?お風呂の時は付けてないよね?」
「はい、お風呂と寝る時と…あ、あと授業が体育の時は落としそうだから更衣室に置いてます」
「ん、分かった」
そう返すと、地下駐車場まで来た南倉はユキトを助手席に乗せ手早く車を発進させる。
聞きたいことが沢山あるのだろう依頼人そして恋人の視線を感じるが探偵は今は余裕が無かった。急がなければならない。
この車には対発信器用の妨害電波装置が備え付けられている。異常音が無い辺り今のところ安心だが油断は禁物だ。
探偵はチラッとミラーで後部を確認する。追ってくる車もバイクも見当たらない。
だけど、念には念だ。
「ユキトくん、自分のシートベルトにしがみついて離さないで」
「え、は?はい」
ユキトは早口の探偵の言う通りにする。
それを視界の端で確認した南倉はハンドルを鋭く切った。左の細い道にタイヤを軋ませながら入り、暫く走り急ブレーキをかけ、また左折。そして間を置かず更に左折。
「な、なくらさん、道に迷ったんですか?」
荒すぎな運転に酔いそうになりつつもユキトが訊ねる。曲がる前の道に戻って来たので、そう思うのも当然かもしれない。
少年は方向音痴でないようで何よりだ。南倉的には撒いているだけなのだが。可愛いなと場違いにも和む。
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