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鳴上はああ言ったものの、昨日あれだけ嫌いだと言っといて、今さら見合いをやめて欲しいなんて言えるはずもない。それどころか、話さえ出来ないまま、相手が訪問してくる時間になってしまった。
「じゃあ、もう、お仕事なさってるんですか?」
「ええ。日本での仕事はほぼ任されています」
「すごい」
「いえ、そんなこと」
いらいらいらいら。
扉付近で待機している俺は、賢斗と相手の女の会話が聞こえるたびに、苛立っていた。賢斗があの女に笑いかけるたびに、自分の顔が引きつっていくのを感じる。
「修弥、大丈夫?具合悪い?」
横にいる瑞希が俺の顔を見て心配そうにするが、俺はそれどころではなく素っ気ない返事をするだけだった。
「別に」
「そう?無理しないでね」
だいたいなんだあの顔。あいつの笑顔はもっと性格悪そうな顔だろ。俺はあんな優しい顔を向けられたことない!
談笑する二人をひたすら睨みつけていると、賢斗がちらりとこっちを見た。そしてまた女と話し始めたかと思うと、席を立ってこっちへ歩いてくる。
話しかけてきたのは俺にではなく、瑞希にだった。
「瑞希、少し席を外すから、お嬢さんの相手頼めるか?」
「え?あ、はい!かしこまりました!」
突然のことに動揺しながらも、女の元へと向かう瑞希。それを見送った賢斗は次は俺の腕を掴んだ。
「お前はこっち来い」
「は!?」
腕を引かれて連れていかれたのは一番近くにあった空き部屋だった。使われてない部屋とはいっても、もちろん掃除は行き届いている。
俺が扉を閉めると、先に部屋に入った賢斗は振り返って俺を冷たい目で見てきた。あの女に向けていた笑顔は欠片もない。
「お前さ、ガン飛ばしすぎだから。お嬢さんがビビってんだろ」
「別にお前らのことなんか見てないし」
俺がそっぽを向いてそう言えば、賢斗は深いため息をひとつ吐いた。
「あのさぁ、お前が俺のこと嫌いなのは昨日でよく分かったよ。でも、いくら俺のことが嫌いだからって見合いの邪魔までしてんじゃねえよ」
「......っ、ちがっ」
嫌いだからじゃなくて見合いをやめて欲しかった。
鳴上に言われた通り、必死に素直な気持ちを口にしようとしたが、賢斗はそれに言葉を被せてくる。
「お前、今日は俺の近くにいなくていいから」
「......え?」
突然告げられた内容に頭が追いつかず、俺は間抜けな声を出してしまう。そんな俺に、賢斗は言葉を続けた。その目つきや声はやはりどこか冷たい。
「てか、もう俺の専属しなくていい。凌真のとこにでも行けば?その方がお前も楽だろ」
賢斗はそれだけ言うと、部屋から出て行こうとした。慌てた俺は、横を通り過ぎようとする賢斗の右肩を掴んでしまい、賢斗は顔をしかめる。
「ーーっ......いてぇよ」
「あっ、悪いっ......じゃなくて、どういうことだよ!?」
賢斗に睨まれてすぐに肩から手を離すも、俺は賢斗に食ってかかった。
だって、こんなの納得できない。俺はまだこいつをギャフンと言わせていない。俺はこいつに気持ちを伝えられていない。
言いたいことはたくさんあるのに、ついつい睨みつけてしまうのは俺の悪い癖。いつもは笑って受け流してくれる賢斗も、今日ばかりはそんな風にはいかなかった。
「はぁ?そのままの意味だろ。お前の顔なんか見たくねぇんだよ」
賢斗の言葉に、俺の胸はズキッと痛む。
今まで自分が散々言ってきたのを棚に上げていることは分かってる。だけど、賢斗に拒絶されるのは相当辛い。俺は本当に自分勝手な人間だ。
「......俺のこと嫌いになったのかよ」
自分の気持ちを伝えるべきなのに、俺はまた逃げて、賢斗にばかり言わせようとする。その代償は賢斗からの蔑みの目だった。
「そんなのも分かんねえの?お前ってほんと馬鹿」
そう言い残して部屋を出て行く賢斗を、俺は黙って見つめることしかできなかった。
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