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風呂に入ってから修弥が部屋に来るまでの間、仕事の書類に目を通していると、ドアがノックされた。
「はい」
修弥にしては早すぎるから、他の執事かメイドだろうかと返事をすれば、入ってきたのは意外な人物だった。
「珍しいな。お前がドアをノックするなんて」
珍しく真面目な顔をした凌真は、俺の皮肉をスルーして、近づいてくる。
「兄貴、話したいことがあるんだけど」
「ん?ああ、別に良いけど」
俺がそう言って書類を机に置くと、凌真はソファへ腰を下ろした。
俺は仕事用の椅子に座ったまま、身体を凌真の方へ向ける。
「で、何だ?改まって」
「俺が家を継ぎたい」
「は?」
あまりにも唐突で、つい変な声が出てしまった。
我に帰った俺は咳払いをしてから、口を開く。
「いや......お前、何もしたことないだろ。今だって、俺だけがしてるし」
「だから、今からいろいろ学んでく。兄貴は絶対に家を継ぎたいの?」
「別にそれはどっちでも良いけど......。どうしたんだ急に」
何でいきなりそんなことを思い立ったのか。
こんなの面倒臭がり屋の凌真らしくない。
「俺は自由とかいらない。でも兄貴には修弥がいるでしょ?」
「......」
「だから、俺が継ぐ」
そうはっきりと言う凌真に俺はため息を漏らす。
「......あのなぁ、俺の為を思ってくれてんのは嬉しいけど、俺のせいでお前が我慢することはないだろ」
自分は修弥と二人で楽しんで、弟の凌真には無理をさせるなんて、そんなこと出来るはずないし、するつもりも毛頭ない。
そう言えば、凌真は首を左右に振った。
「違う。兄貴のせいでとかじゃなくて、俺が家に縛られたいの」
「縛られたい?ははっ。お前ってMだったんだな」
「......」
茶化すと凌真は怒るでもなく、じっと俺を見つめてきた。
その表情から、本気なんだなと思った俺は、肩をすくめて椅子から立ち上がった。
「冗談だよ。お前がそうしたいなら良いよ。俺はどんな立場だって、やることは一つだからな」
「......修弥を守る?」
「ああ」
凌真の隣に座り、凌真の頭に手を置く。
「......無理、してないんだな?」
「うん。無理しないために、継ぎたいの」
「......分かった。ちょうど来週あたりに、父さんたちが帰ってくる。その時、言おう」
「ん」
話が終わった途端、凌真は立ち上がり、ドアの方へ歩いて行く。
「もう行くのか?」
「うん。だって、修弥と兄貴のセックスなんて見てらんないもーん」
すっかり元の調子に戻った凌真に苦笑が漏れた。いつもの凌真に少し安心したからだ。
「さすがに見せねえよ。あ、でも、あいつの恥ずかしがる姿は良いかもな」
「わー、へんたーい、きもーい」
凌真はそう言い残して部屋から出て行った。
自分も仕事に戻るために、机へと向かい直す。
「......無理しないため、なぁ......」
俺のそんな呟きは、静かな部屋の中に消えていった。
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