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大事な話だから、外や車の中ではしたくなかった。
そうしたら俺はすぐ逃げ出してしまうから。
だから鳴上の仕事が終わる頃、俺は鳴上を自分の部屋に呼んだ。
「修弥様、お話とはなんでしょう?」
首を傾げる鳴上に座るよう促す。
いつも通りの隣に。
鳴上が座って一呼吸置いてから、俺は深く頭を下げながら、口を開いた。
「鳴上、ごめん。俺......やっぱり賢斗が好きだ......」
「......」
「本当に最低なのは分かってるけど......別れてほしい」
「......修弥様」
少しの静寂が起きて、心臓がバクバクと響く。
何と言われるかが怖くて、顔もあげられない。
「......分かりました」
「......責めないのか......?」
責められて当然なのに、鳴上はそれをしない。
「いえ、分かっていましたから。私は賢斗様の代わりにはなれないのだと」
その声がとても悲しくて、顔を上げると、鳴上はやはり辛そうな顔をしていた。
別れ話なんだからそれは当然のことなんだろうけど、このままじゃ駄目だと思った。
鳴上にちゃんと俺の気持ち伝えなきゃ。
「違う......。代わりとかじゃない.....そんなこと、思ってない」
「良いんです。修弥様」
「違う!!」
怒鳴れる立場じゃないのに、俺は鳴上の襟を掴む。鳴上は戸惑った様子で俺を見た。
「修弥様.....?」
「違う......違う。確かに最初は、寂しかったから鳴上と付き合った。けど、賢斗の代わりだと思ったことなんかない」
鳴上がいなかったら、俺は多分もっとクズだった。
一夜限りを繰り返して、病気をもらったかもしれない。悪いやつに捕まって、家に帰ってこれなくなったかもしれない。
何より、幸せそうな人間を見ると、憎しみでいっぱいになる最低な人間になってたかもしれない。
そんな誇れない自分にならないで済んだのは、鳴上がいたからで。
賢斗の代わりとかそんなことじゃなくて、ただ俺は......。
「......俺は鳴上のこと好きだった。鳴上自身のことが好きだったんだ。今だって好きだ。賢斗のとは違うけど、好きで大切で、一緒にいると心が落ち着くんだ!家族みたいに、......っ」
家族。
そう、自然と口にしていた。
「あ、ごめ、えっと......」
今の状況でこの言葉はどうなんだろうと焦って、襟から手を離した。
付き合って散々することして、今更家族なんて、馬鹿げた話。
「だから、......本当ごめん。鳴上のこと、大事なのに、傷つける......」
上手い言葉なんて思いつかなくて、とにかく謝るしかないと思った。
けど鳴上は首を横に振る。
「いえ、修弥様」
「鳴上......?」
「私はそのお言葉だけで、充分幸せです」
「.....っ」
珍ししいなんてもんじゃない。もう一生見れないのではないかというくらい幸せそうな顔で、鳴上は微笑んだ。
すごく綺麗な顔で微笑む鳴上が、俺の頬に触れる。
「修弥様、どうか最後の私のわがままをお許しください」
「え......。.....っ」
鳴上は俺に唇を重ねた。
触れるだけの、本当に軽いキス。
「修弥様......お慕いしています。けれどその前に、あなたは私の大切な主人です。あなたの側で仕えることが出来れば......これ以上の幸せはございません」
「じゃあ......これからも、側にいてくれるのか......?」
ものすごく酷なことだと承知している。
けど、鳴上はやっぱり幸せそうに微笑んだままだった。
「はい。修弥様が望んでくださるのなら、いつまでも」
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