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三十六。にしおりをはさみました!
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三十六。
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*
「………………。」
ーーーしかし、トウヤは叫び声ひとつ上げなかった。
血塗れになった足を見ても、何も反応しない。
興味無さげに足を振るだけだ。
「ふむ、まだいけますね。」
その異常な光景を見て、葵の心は少し動揺する。
「……こいつ……っ、」
(何故そんなに平然としていられる……!?)
彼はいつもと同じ通りに、むしろ軽快な足取りで葵に近づいていった。
彼の片足から流れる血が、足跡を作っていく。
「……してやられました。ですが、こんなもので私の動きは止められない。」
葵はトウヤが近づく前に、彼と距離を取るために全力で走る。
(とりあえず、慎太郎くんと冬護さんには被害が出ないよう距離を置かなければ……!)
「おや?鬼ごっこですか?」
葵は走りながら、トラップを仕掛けていく。
(まだだ。まだ攻撃を仕掛ける時じゃない…!!)
葵は懐から目眩しのための煙幕を取り出した。
ピンッ
引き金を抜き、地面へと投げ出す。
すると白い煙がトウヤの視界を包み込んだ。
「……煙幕?つまらないですね。」
退屈そうに溜息をつくトウヤ。
銀色のフレーム眼鏡を正しながら、彼は迷うことなく真っ直ぐ歩みを進めた。
その間何度かピアノ線のような糸が切れ、釘のように鋭い針がトウヤを突き刺した。
しかしそれさえも、彼にとって優しいものに過ぎない。
彼は自分の身体から、針を抜き投げ捨てる。
彼の白い手袋が、赤へと染まっていった。
「もっと僕を楽しませてくださいよ。こんなものは僕に通用しない。」
「……そうだろうな。」
「!!」
すると見えない死角から、大きな手が飛び出した。
トウヤは素早く避けようとしたが、それができない。
煙が消えよく見てみれば、片足にはいくつものピアノ線が絡まっていた。
(っ、いつの間に……!!)
白煙でハッキリとしない視界。
釘の攻撃で、彼は足に絡みつく糸に気づかなかった。
葵はトウヤの頭を引っ掴み、地面へと思いっきり叩きつける。
ドゴッッッ!!!
コンクリートの地面に血の泡沫と大きなヒビが入った。
「……どうだ。これで少し楽しめそうか?メガネくん。」
葵の冷たい視線が、トウヤを貫く。
「……っ、だいぶね。」
血塗れになりながらも、トウヤはへらりと笑った。
フレームの歪んだ眼鏡から、闘志に燃える彼の瞳が伺える。
カチャッ
「!!」
トウヤは黒いナイフの刃先を、葵に向けた。
カチッッ
彼がレバーを引きスイッチを押すと、その刃は飛び出し葵の目を狙う。
「っ、」
それに反応した葵は、顔を避けたが頬に僅かな擦り傷をつくった。
「重いですよ。私から退いてください。」
ワイヤーで繋がれた刃を、トウヤはスイッチで引き戻す。
クイッ
その途中でトウヤは手首を動かし、ワイヤーの角度を変えた。
ビュンッ
勢いのついた刃は、葵の首筋を傷つける。
「チッ!!」
首に焼け付くような痛みを感じた後、葵はその場から退いた。
カランカランッ
そして逃げる途中で閃光弾を取り出し、トウヤに向けて放つ。
カッッ
強烈な光をトウヤの目に浴びせた。
「……ふふ、今度は閃光弾ですか。」
トウヤは瞼が開かなくなった目で、ゆっくりと立ち上がる。
その場は誰もおらず、葵の姿はない。
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