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episode.111 作戦いちにしおりをはさみました!
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episode.111 作戦いち
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〜恋side〜
3月21日 18時 青木家
「……へ、へぇ……小雪さん誕生日なんですか。」
明希が話を聞いてそう言う。
「うんー!」
「どうしてもみんな呼んでパーティーだって聞かなくてな……」
赤津が申し訳なさそうにそう言う。
「……構わないけど……千秋、お前いい加減俺の背中から離れないか?」
千秋は紘の背中に隠れてぎゅっと服を掴んでいる。
相当小雪を警戒しているらしい。
「どうしたんだ?この前も小雪には会っただろ?」
千秋はそう言われても紘の背中から離れない。
「千秋ちゃん?僕のこと忘れちゃった?」
小雪はそう言って千秋の方に手を伸ばすが、千秋はそれをパシッとはたく。
「あ、こら!千秋!」
紘が珍しく声を荒げ、雰囲気でそれを察した千秋はビクッと肩を震わせる。
「あ、あー、えーと、とりあえずみんな中に入ってください。千秋も、おいで。」
千秋は今度は恋の背中に隠れるようにして紘からも小雪からも離れる。
(こんなんで作戦とか、やってられるの?)
次に全員で集まった時に作戦をやってみようという話になっていたのだが、それどころではなさそうだ。
「あー……ごめんって、千秋。」
"ヒロさん嫌い……"
「え……」
千秋はそう言うと唖然としている紘を置いて、スタスタとリビングに行ってしまう。
「あ、千秋ー!」
「え、ちょ、明希ちゃん待ってよ!」
それを追うように明希と木之本も入っていく。
「嫌い……」
紘にはダメージが強すぎたようだった。
「あー、とりあえず、入ったら?紘さんも。」
「嫌い……」
赤津の言葉も頭に入っていないようだ。
「ねー、紘さん?」
小雪がそんな紘の腕にぎゅっとしがみつく。
「僕の誕生日、お祝いしてよ?千秋ちゃんと一緒にさ!」
「……あ、あぁ……」
「琉さんもいこ!」
そう言って小雪は琉の腕も掴んでリビングに向かう。
「……はぁ。」
1人玄関に残された恋はため息をつき、リビングに向かう。
「……え、なにこれ。」
リビングで目にした光景は明希と千秋がソファに座ってクッションを抱えているところ。
「2人とも何してんの。」
「えー?恋の家のクッションってもふもふしてるじゃん?もふもふしてるの好きー!」
千秋も心地よさそうにクッションに鼻を埋めている。
「……いやいやちょっと意味わかんないし、木之本さんいつまで立ってるんですか?」
「え、あ、ごめん。」
「……紘さんも。」
「あ、うん。」
「恋もおいでよー。」
「は?いや、準備があるし……」
「たまには座ってろ。俺が準備するから。」
「え、あ、え?」
赤津に頭を撫でられながらそう言われ、恋は混乱していた。
「ほら、早くー。」
明希から催促され、千秋にも手招きされ、恋はおとなしくそちらに向かう。
恋はソファに座ればいつもクッションを抱えるから、いつものようにそう座った。
「小雪も座ってな。」
「うん。」
恋の家のソファは広い。4人が横に座れるだけのスペースはある。それが2つある。
小雪も恋の隣に腰掛け、同じようにクッションを抱えた。
すると明希が、恋の方を見て、パクパクと口を動かしてきた。
"さ、く、せ、ん、い、ち!も、ふ、も、ふ、か、わ、い、い、れ、ん、を、あ、ぴー、る!"
作戦1、もふもふ可愛い恋をアピール、らしい。
「わけわかんないんだけど……」
ボソリとそう呟くが、作戦はすでに開始らしい。
「ね、恋、もふもふのクッション、どこで買ったの?」
「え、えーと……確か、赤津さんと住み始めた時……家具を木之本さんと一緒に見に行って、その時買ったクッション。それに、冬用のカバーかけただけ、かな。」
「え、待って待って待って。恋、記憶戻ってるの?」
赤津が食いついたようにそう言ってくる。
「え、あ、ちょっと……だけ?」
「なんで言ってくれないの?!」
「え、あ、すいません……」
「も……ふ……」
恋が謝り、その場が少し静かになった時、隣に座る千秋が声を出した。
その声は当然紘にも聞こえていたわけで。
「千秋、もう一回!!もう一回言って!!」
耳は聞こえていないだろう千秋に全力で話しかけている。
「も……ふ……?」
千秋はさっきよりは小さな声でそう言う。
自分が何と言っているのかわかっていないのだろう、首を傾げている。
「え、ちょ、紘さん、鼻血!!!」
「ティッシュティッシュ!!」
「翔也さんティッシュとって!」
慌てる恋たち4人とは裏腹に固まったままの紘たち3人。
「ちょっと翔也さん?!」
「え、あ、ごめん、なんだっけ?」
「だからティッシュー!」
わたわたと動き始めるみんな。
「……なにこれやばい。」
赤津がそう呟いたことなど、誰も知らない。
(てかこれって、小雪さんも同じことしたら結局俺より可愛いのでは……)
恋はそんなことを思っていた。
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