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episode.126 涙にしおりをはさみました!
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episode.126 涙
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〜恋side〜
赤津と小雪が出て行った部屋に、恋はへなへなと座り込んだ。
(赤津さんに、嫌われた……)
恋はふとそう思った。
そう思ったら、涙が溢れて止まらなかった。
「っう……うっ、うぅっ……あ、かつ、さっ……ぅ……」
恋は部屋にいるのが息苦しくなって、家を出て住宅街を走った。
どこに向かうのかもわからない。
千秋の家や明希の家に行けばよかったと後悔したが、今更遅かった。
知らない道に出てしまい、戻ることもできない。
5月の夜は、まだ少し肌寒かった。
恋の目からはまた涙が溢れて、自分でもどうしたらいいのかわからなかった。
そんな時だった。
「恋くん?青木、恋くん、だよね?」
声をかけてきたのは、烏沢の事件を担当した検事の九十九遥だった。
その声に顔を上げると、遥は驚いた顔をした。
「どうしたの?!そんなに泣いて……大丈夫?ていうかこっから家遠いよね?送って行こうか?」
遥の言葉に、恋は首を横に振る。
何だか今は帰りたくなかった。
「じゃあ、うちに来る?ここからすぐだけど……」
遥の言葉に恋は頷き、ぎゅっと遥のスーツを掴んだ。
「うん、おいで。話聞いてあげるよ。」
遥は優しく微笑むと恋を家に連れて行ってくれた。
「寒かったでしょ。」
家に着くと遥はリビングのソファに恋を座らせ、毛布をかけた。
「で……なにがあったの?」
そう聞かれれば、先ほどのことが思い出されて、また涙が溢れてきた。
「大丈夫だよ。大丈夫だから、話してごらん?」
遥にそう言われて、恋はポツリポツリと話し始めた。何度もつっかえても、遥はなにも言わず、黙って聞いていた。
「うん、そっか。勘違いされちゃったんだね?」
小雪に言われたことは話さず、ただ、恋がやったと思われた、ということだけを話した。
「大丈夫だよ。誤解は解けるものだからね。それに、赤津さんはきっと恋くんがやったなんて思ってないよ?」
「で、もっ……恋、本当なのかって……」
「それは、信じられなかったからそう聞いたんじゃないかな?もし恋くんがやったって思ってたなら、最初から怒鳴ってると思うなぁ。きっと、嫌われてるってことはないよ。」
遥はそう言って優しく恋の頭を撫でた。
「さて、赤津さんも心配してるだろうから、お家帰ろっか?」
恋は今度は素直に頷いた。
遥は家を出る前に誰かに電話をかけている。
「ん、あ、もしもし?零?ちょっと今から恋くん送ってくるから、家空けるね。」
零が帰ってきた時に心配しないようにだろうか、そう言っている。
「……え?うちの近くで泣いてたからさ……送ろうかって言ったら最初嫌がって……だから今ちょっと話聞いてたんだけど……大丈夫、怪我とかはしてないし、今はもう帰るって言ってるから。うん、赤津さんにもそう伝えて。」
遥は電話を切ると玄関にいた恋の方にやってきた。
「お待たせ。」
「……赤津さん、いたんですか……?」
「うん。病院で零と一緒にいたみたい。木之本さんが恋くんの家に行ったら、恋くんがいなくてびっくりしたみたいだよ。」
「ごめんなさい……」
「大丈夫大丈夫。誰も怒ってないよ。大丈夫だから。さて、帰ろっか?」
恋はこくりと頷き、遥の車に乗った。
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