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〜明希side〜
28日 14時
「はぁ…」
実家を目の前にして、不安になり、ため息をついた明希。
「大丈夫だよ。」
翔也はそんな明希の手を優しく握って、そう言ってくれる。
コク、と頷いて、震える指でインターフォンを押す。
『はい。』
「明希です。父さん、いますか?」
『はい、いらっしゃいますよ。ただいま門を開けに参りますね。』
程なくして執事が出てきて、門を開けてくれる。
「翔也様もご一緒でしたか。」
「はい。お邪魔します。」
翔也に手を引かれて、緊張しながら家に入る。
「おぉ、明希。翔也くんも。」
「お義父さん、ご無沙汰してます。」
「どうしたんだい?」
「お話があって。」
「話?菜々子も呼ぶかい?」
「はい。お願いします。」
俯いている明希の代わりに、翔也が全て話してくれる。
明利が菜々子を呼んできて、4人で書斎に入った。
「それで、話って?」
「明希のことなんですが…」
翔也がチラ、とこちらを見る。
自分で言わなければならないとわかっているのに、口がなかなか開かない。
誰も急かすことなく、明希の言葉を待ってくれる。
明希は深呼吸して、顔を上げた。
「あ、の…俺…妊娠、できない…って、言われて…」
話しながら、俯いてしまう。
「治療、しないと…絶望的だって…」
「そうか…」
「ごめん、なさい…」
申し訳なくて、明利の顔を見れなかった。
「謝ることなんてない。絶対に無理というわけではないようだしな。じっくり考えたらいい。」
「え…」
「そうね。明希が子供が欲しいと思うなら治療すればいいと思うわ。」
顔を上げると、明利も菜々子も、優しく微笑んでくれる。
「金銭的な援助しかできないが、何か必要なことがあれば言いなさい。」
「辛いことがあったらいつでもきていいのよ。」
「…父さんっ…母さん…」
我慢していた涙が溢れてくる。
「辛いわよね…大丈夫よ。明希はまだ若いもの。きっとうまくいくわ。」
菜々子にそっと抱きしめられて、明希も腕を回す。
「っう…うぅ、う…ごめ、なさいっ…ごめ、なさ…っ…」
「大丈夫。大丈夫よ。」
優しく頭を撫でられて、ぎゅっと抱きしめられる。
不安でたまらなかった。
悲しませてしまったらどうしようかと思っていた。
でも、明利も菜々子も、明希のことを思ってくれていた。
それが嬉しくて、でも、なおさら申し訳なくて、ボロボロと涙が溢れる。
「治療というと、何をするんだい?」
「投薬を今から始めて、まずは薬を体に馴染ませるんだそうです。それから、人より多く薬を打つそうです。」
一度器官ができてからも、3年に1度くらいの頻度で、投薬をする必要がある。
明希の場合、それより多く打たなければならないということなのだ。
「そうか…翔也くんは、明希のことをケアしてやってくれ。お金については全て援助しよう。というより、援助させてほしい。私にはそれくらいしかできないからね。」
「ありがとうございます。」
「と、さん…あり、がと…」
「そんなに泣くな。可愛い顔が台無しだろう。」
「っ…うん…」
明利に頭を撫でられて、安心する。
「大学卒業までには、薬が馴染むと思うので…本格的な治療はそれからです。」
「わかった。明希。辛いことがあったらなんでも言いなさい。」
「そうよ。遠慮なんてすることないんだから。」
「うん…ありがと…」
「ありがとうございます。お義父さん、お義母さん、たくさん頼ってしまうと思うんですけど…よろしくお願いします。」
翔也がそう言って頭を下げてくれて、明希も頭を下げる。
「全く…家族なんだから当たり前だろう。」
「ほんと、話があるなんて言うから、どんなことかとヒヤヒヤしてしまいました。」
「全くだ。離婚なんて切り出されたら翔也くんを殴ってやろうかと…」
「あはは!すみません。変な心配おかけして。明希は手放しませんよ。お二人に反対されても、俺は明希を手放したくありませんから。」
翔也はさらりとそう言ってのける。
明希はそれに、顔を赤くした。
「ははははは!とんだ杞憂だったな。これからも仲良くやってくれ。夕飯は食べていくのかい?」
「明希、どうする?」
「食べて、行きたい…」
「うん。わかった。」
「それじゃあ今日は張り切っちゃうわね!」
「俺も手伝いますよ。」
菜々子に向かって翔也がそう言うので、明希は慌てる。
「翔也さんはダメ!」
「ん?なんでダメなんだ?」
不思議そうにする明利と、何かを察したような菜々子。
翔也はダメなの?というような目を向けてくる。
「翔也さんは危ないからダメ。俺が手伝う。」
「ふふ、じゃあ明希にお願いするわね。」
「仕方ない、翔也くんは私に付き合ってくれ。」
「いいですよ。」
きちんと両親に話をした明希の心は、だいぶ軽くなっていた。
明希は心の中で、改めて翔也に感謝をした。
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