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135にしおりをはさみました!
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135
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「雅です。お客様をお連れ致しました」
「ああ、通して」
応接室のドアをノックしてから入る。父さんとは何を話していたのだろうか、二人の表情からはなにも読み取れない。この二人の親密さは色恋でないことは明確なのに、ただの友人関係とも、ましてや先輩後輩関係だけとはとても思えなかった。俺ではなく父さんだから、蓬莱さんと対等でいられるというのだろうか。
「悪いね、わざわざ来てもらって」
「いえいえ、蓬莱さんの無茶ぶりは今に始まったことではないですからね。えーと、そちらが東雲さんですよね。初めまして、東原です」
「どうも」
東原と名乗るこの優男と父さんは初対面、らしい。三人でいったい何を話し合うのか、全く分からないが俺はお茶を用意するために一度下がった。
二人には緑茶を、一豊さんには白湯に近い温めの茶を用意して再び応接室のドアをノックする。入ると父さんと東原さんが何やら書類を渡し合っていた。
「ありがとう。終わったら言うから、それまでゆっくりしておいで」
「夕飯......東雲さんと、東原さんも召し上がって行かれるんですか?」
「まぁ、折角だし。どうかな?」
「久しぶりに雅の飯が食えるなら喜んで食うよ、俺は。東原さん、案外こいつ料理上手いですからね。外に食べに行くより、雅の料理食べながらここにある酒片っ端から飲んでやりましょう」
「ははは、ではお言葉に甘えて」
一豊さんも食べられて、かつ酒の肴にもなるメニューを考える。何にせよ、買い出しには行かねばなるまい。
「......一豊さん」
「ん?」
「ちょっと、近くまで買い物に行ってきていい?」
「ああ、そうか。うん、気を付けて行っておいで。無理しなくていいからね」
「はい。......一豊さん」
「ん......はいはい」
俺の視線を読んでくれたらしい一豊さんが、頬にキスをくれた。子供っぽいと思われただろうか。でも、それだけじゃ足りなくて、一豊さんにぎゅっと抱きついてその温もりを感じてから身体を離した。
「......失礼致しました」
部屋を出る時、父さんの呆れたような顔が見えた気がしたが、さっさと行ってしまおうとドアを閉めて家を後にした。
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