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18歳以上ですか?
192にしおりをはさみました!
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192
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(Side:彰吾)
前回来た時にも入った応接室のドアをノックしてから入ると、東雲さんと芹沢さんがお互い俯きながら茶をすすっていた。
「なんだ、おまえまでこっちに来たのかよ」
「雅くんの側にいてあげたら?」
「......出てけって言われちまいました」
「あらら......」
芹沢さんがお茶を入れてくれた。湯気が消えていく様子を見つめながら、自分には何ができるのだろうかとため息が出た。
「まぁ......雅のことだから落ち込むことくらいは予想してたがな......はぁ......成宮」
「......はい?」
「龍弥が行方不明だ」
「は......え?ええっ?」
追い討ちをかけるようにさらにとんでもないことを聞かされて、俺の頭はパンクしそうだった。
「け、ケーサツ......」
「会社を辞めたらしいんだ。まぁ......日本の警察も馬鹿じゃねぇから、どこかで何かありゃ俺の所に連絡の一つも来るだろ。それがないってことは、どこかで生きてるさ」
「それ......雅は?」
「言えるわけねぇだろ、この状況で」
「......っすよね」
「雅には、おまえしか頼れるやつはいないんだよ」
「で、でも、俺は......っ」
「雅はおまえを愛してるよ。今は頑なになって蓬莱さんにしがみついてるけどな。......俺ができるのは、あいつが死なねぇように見張ってることだけだ。5年前、雅を救ってくれたじゃねぇか。また、助けてやってくれないか」
「......俺、が......」
助けてやりたい。振り向かせたい。雅の笑顔が見たい。俺のため、雅のため、本当に雅がまだ俺を少しでも想ってくれているなら。
玄関チャイムが鳴った。坊さんが来たらしい。再び座敷へと移動する。泣き濡れた雅の顔は見ているだけで辛くなる。蓬莱さんが死んだことよりも、今は雅のことが心配でならなかった。
坊さんのお経が始まる。俺は雅の斜め後ろに座ってずっとその横顔を見つめた。はらはらと零れ落ちる涙を、隣に座る東雲さんがときどき拭いていた。
お経が終わればすぐに霊柩車がやってきて、蓬莱さんの体は棺の中に納められた。
「あ......ぁ、ぁ......」
声にならない声で、棺に移されていく様を見てその場に崩れ落ちた雅を咄嗟に抱き止めた。あまりにも細くなりすぎた身体。ぎゅっと抱きしめてみると、びくりと身体を強ばらせたのがわかった。
「雅ちゃん......」
「......っ、しょぅ......」
振り向いて、そして初めて俺の目を見た。儚くて、今にも壊れてしまいそうなガラスのような瞳。
「俺が、いるから......」
雅は小さく首を横に振って、蓋のされた棺を見つめた。
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