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恋?俺が?多賀さんに?
冗談だろ…だってこんなのリアルBLじゃん??
そんな事をベッドに横になって考えていた。
う…俺、無意識にクッションとか抱き締めてるし…
「乙女かよ!」
ふと、隣りの姉貴の部屋から話し声が聞えて来た…ん?男の声?
『やっと会えたね将』
『あぁ、会えない間ずっと拓巳の事ばかり考えてた』
『僕もだよ将』
将に…拓巳?あぁ、あの時のBLCDか。
『離れてた分一杯触ってもいいか?』
『あっ…ぅん…一杯触って…一杯名前呼んで…っ』
『あぁ、好きだ拓巳』
ー『好きだよ晴紀くん…』ー
え?うそ…俺、今何考えた⁉︎
一瞬俺の頭の中に浮かんだ映像は、多賀さんに抱き締められて、耳元で名前を囁かれる俺の姿だった。
な、何て事想像してんだよ俺!
くそっ…それもこれも、こんなBLCDを大音量で聞いてる姉貴のせいだ!!
「おい姉貴!!母さん達が居ないからって、そんなCDヘッドフォン無しで聞くなよな!」
俺は勢いよくクッションを壁に叩き付けた。
「またまた~そんな事言って聞き耳立ててるくせに…あ、それとも違う所が‘たって,来ちゃって困るとか?」
だめだ…骨の髄まで腐ってる。
「そ、そんな訳あるかバカ姉貴!」
俺はそう愚痴をこぼしながら、姉貴が俺を腐男子の世界に引きずり込もうと部屋に勝手に置いて行ったBLマンガをパラパラとめくった。
マンガの中では男同士で簡単に好きだとか、愛してるとか言って、キスしたり、エッチしたりしてるけど、現実にこんな事なんて出来っこない。
って…それじゃまるで、俺もこういう事したいと思ってるみたいじゃないか。
「っ…///」
隣りの部屋からは、相変わらず将と拓巳のめくるめく官能ボイスが響いていて、俺は勢い良く布団を被り耳を塞いだ。
多賀さん、変な妄想してしまってごめんなさい…
あんな妄想をしてしまった次の日。
昨日の今日で多賀さんに会うのは気まずくて、今日は他の運転手さんであります様にって思っていたけれど…俺の願いは空しく、運転手は多賀さんだった。
「……」
昨日は色々考えてしまって、あまり眠れなかったせいか、バスに乗ってすぐ、電池が切れたかの様にまぶたを閉じた。
「……ん」
あ…あれ?バス止まって…
うっすらと目を開け、顔を上げると多賀さんの真っ直ぐ俺を見つめる視線とぶつかった。
「た、多賀…さん?」
俺の寝顔見てたとか?
「あ…っと…晴紀くん、着いたよ」
多賀さんは起こす前に俺が目覚めてしまった事を、バツが悪そうに苦笑しながらそう言った。
「もしかして、ずっと見てました…?」
「ははは…今日でこの寝顔ともお別れかと思うと、つい…ごめんね」
…え?
「今日でって…どういう事ですか?」
「俺、今日でこの路線終わりなんだ」
うそ…っ
嫌だ…だって俺、もっと多賀さんのバスに乗りたいのに…
それに、肝心な事まだ伝えて無い。
「そう…なんですね」
俺の頭の中はグチャグチャで、言いたい事は一杯あるはずなのに、そんなありきたりの返事しか出来なかった。
「うん、今までありがとう。お客さんと、こんな風に仲良くなれたの初めてだったから嬉しかったよ」
多賀さんは優しく微笑むと俺に手を差し出した。
「俺もです…ありがとうございました」
そっと手を出し、多賀さんの手に触れると、ギュッと握り返されて、初めて多賀さんの温もりに触れた。
「じゃあ、またどこかでね」
「はい…」
バスを降り、笑顔で手を振った。
それは、今俺が出来る精一杯の強がりで…
「…っ…」
去って行くバスの後ろ姿が、みるみるうちにぼやけて、頬に熱い滴がこぼれ落ちた。
「‘好き,なんて…マンガみたいに…簡単に言える訳ないじゃん…っ」
俺は泣きながらそう呟くと、多賀さんの手のひらの感触を思い出す様に、ゆっくりとその手を握り締めた。
お別れの日に、初めて触れられるなんて…
酷いよ多賀さん…
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