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33にしおりをはさみました!
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頭が痛え。腰も痛え。
ついでにすこぶる気分もわりい。
「これより、折原に手を出した輩を見つけ出し、しかるべき処置を下すための会議を行う。異論は無いな」
「異議無し」
「ないっす!」
「ありません」
「異議なぁ~~~し」
「どう考えても異議だらけでしょうが」
気だるい身体。立ち上がって力強く反論する気力すらない。よって俺は椅子にもたれ掛かりながらひとりごちるので精一杯だった。
会議は当人を置いて進んでいく。普段の議事よりもスムーズに進んでいるのは俺の気のせいだろうか、いやそうに違いない。九郎は人が感じることの七割は単なる気のせいだと言っていたので、純粋な弟は兄の言葉を素直に受け止めることにした。
「委員長。犯人を確保した者は折原先輩を好きに出来るというのはどうでしょうか」
「イイこと言うじゃねェか、高宮」
「わ~い、おりちゃんで遊べる~~~」
「好きに出来る、か。これほど夢のあるポジティブリストもそうそうないだろうな」
「折原センパイと……にゃんにゃん……折原センパイが……にゃんにゃん……!」
ただ、今この場で唯一認めざるを得ない事柄は――俺の貞操の危機が迫っているということだ。確実に。
「じゃあ俺は去勢の仕方でも調べておきます」
自分でも驚くほどなめらかに頬がつり上がった。途端、会議室は喧騒を忘れる。西永のわざとらしい咳払いを合図に来栖がプルプルと震え始める。そうして、ダン、と机を叩いて、なにかに噛みつくように立ち上がった。
「だってッ……だって委員長が抜け駆けするのが悪いんじゃないっすか……!」
「まさかアレでイクとはなァ」
「ぎゃああああアアアアアアアアアアア!!」
来栖が吐血しそうな勢いで悶え苦しんでいる。本来ならば俺がそうなっているはずなんだろう。が、現実など直視しなければいいだけの話で、今は表情を取り繕って無関係を装うほうが利口だ。
あの場にいなかった高宮は、なにがなんだかわからないとでも言いたげな、怪訝な顔をしていた。発狂し転げ回る来栖への侮蔑も滲んでいる。
同じくあの場にいなかった西永は、委員長と来栖とのやり取りに眉間を寄せていた。こういうときのコイツは、なにやら小難しいことを考えているのが常なのだが――。向けられた視線とうっかりかちあわないよう、明後日の方向に目を逸らす。
ところがその先にいた春野先輩と目があってしまった。春野先輩だけが、すべてを悟ったようにニヤリとほくそ笑んでいた(一般生徒には天使の微笑みだなんだと謳われている)。やはりこの人は侮れない。
「つーか、こんなくだらない問題、風紀委員会に持ち込んじゃダメでしょう」
重く深い溜め息とともに吐き出す。ここまで大事になるとは思わなかった。委員長を蹴り倒してでも逃げ、来栖を殴りつけてでも記憶を抹消しておくべきだったなと今更のように後悔する。
不服の表明なのか、目を血走らせた来栖が、叩き割る勢いでドンドンと机を殴る。
「くだらなくないっすよ! なんせ折原センパイの純潔の危機なんすから!!」
「…………」
誰かさんにあっさり奪われたけどな。
無意識的にそちらの方を見てしまったのか、西永と目があったので、ふっと自嘲気味な笑みを零してしまった。西永はばつが悪そうな顔をする。それでも、決して俺から目を逸らそうとはしなかった。だから今度は俺が変な顔になる番だった。
――結局、いつだって俺から逃げるしかないんだ。
「俺に無断で手ェ出したこと、死ぬほど後悔させてやる」
「折原センパイ、俺がアンタを守りますからね!!」
「どんな手を使ってでも見つけ出します、必ず」
「あ~あ、楽し~~~」
会議は、踊る。
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