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2にしおりをはさみました!
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「いやぁ、2、3軒はしごして来ちゃったよ…そしたら、もうコイツべろんべろんで…」
「そうなんですかぁ、てか飲み過ぎはよくないし、気を付けてね?」
「はぁい!祐里ちゃんがそう言うならっ」
隣の席でわちゃわちゃしている2人。
こちらは気まずい雰囲気の中、必死に営業スマイルを浮かべて酒を注ぐ。
「初めまして…えっと、私、みこりんと申します」
「みこさん?…俺は、雪村桐二です」
みこりんです。
まぁいいけども…
「はい、雪村さんですね…今日はどうしてそんなに酔っているのか聞いてもいいですか?」
ここでの俺は、いつもの俺とは違う。
こういう時はトークが大事だよね。
いつも馬鹿にされてる分、ココで小馬鹿にしてやろうか、ふふふ。
なんて思っていると、
「彼女と別れた…ので、ヤケ酒、を」
「そ、そうなんですか…それは、辛かったですね」
雪村さん、彼女いたんだ。
こんなやつでも、寄り添ってくれる人がいたんだ。
そして、失恋したらヤケ酒なんてするのか。
驚きながら、ありきたりな言葉をかけた。
「…う、別に…そんなことない。俺は、仕事が忙しいからな…相手に構ってやる暇がない」
最後まで残ったり、入念な書類の最終チェック。
全部雪村さんがやってたからなぁ。
そりゃあ、彼女さんに構う暇なしになるわ。
「お仕事…お忙しいですからね…」
「…え?」
「あ、いや…えと、忙しそうですからね…ち、ちなみに何をやっているのですか?」
いけない、いけない。
ついつい三橋昂生になってしまった。
「市役所の公務員です」
知ってますよ、よーく、ね。
このやりとりは何だかおかしい、けど今は客と店員。
自分にそう言い聞かせる。
「なるほど、雪村さん…頭良さそうですけど、大学はどこに通ってたんです?」
「K大です…」
「ええぇ!?K大ならもっと良いとこに就けたんじゃないですか?」
「生憎、そうもいかない…理由があってな」
ずっと疑問に思っていたことを聞くと、雪村さんは、ため息混じりにそう呟いた。
「…り、理由って?」
「弟を養ってやらなきゃならない…だから、あまり遠くには行けないし、時間も遅くまでは無理なんだ」
弟さんがいたんだ。
養ってあげないといけないほど幼いのか、その弟さんは。
それにしても、両親とかはどうしているのか。長男に弟を任せっきりの非常識な親なのか?
いや、雪村さんの両親がそんなわけない。
「大変ですね、その…こんなことしか言えませんけど、無理はしないでくださいね」
「…ありがとう、ございます。不思議だ、少しだけ気が楽になった感じがする」
この人の事はとても苦手で、絶対に合わない。
そう思っていたのに、苦笑しながらそう言う彼を見ていたら、俺は同情していた。
俺だって、不思議だ。こんな感情。
「みこりーん!代行の人頼んでくれる?大原さんお帰りになるって、」
「あ、はーい」
代行業者の人を呼んで、大原さんと雪村さん二人はお帰りになるそうだ。
祐里ちゃんの担当した大原さんはもう唸り声しか出していない。
一方で雪村さんは少しだけ喋れていて、顔がお酒に酔って火照っている。
「また来るねぇ?、祐里ちゃんばいばーい!」
「お酒もほどほどにしましょうね、またお越しくださいませ!」
祐里ちゃんが笑顔でお見送りをした。
「今日は…ありがとうございました」
「い、いえ…また私でよければお話を聞きますよ」
年上で職場の先輩を邪険には扱えない。
でも、この人が昼間堅い仮面を崩さないのなら、せめてもの晴らし場としてココに来て欲しい。
同情心から、そのような事を言った。
昼間見せない姿を、お酒により見てしまったけど、
同時に、ほんの少しだけ、この人の事が分かってきたような気がする。
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