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16にしおりをはさみました!
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僕は楽譜と楽器ケースを部屋に置いて、着替えのTシャツとハーフパンツを持ってバスルームに向かう。
「うわ…」
青痣だらけの自分の身体を見て、僕は目を細める。保身的な達紀は決して見えるところを殴ったりせず、服で隠れる場所だけを殴る。
「……っ…!!」
身体を洗うと昨日の傷がしみる。せっかく母さんが僕を気遣かって晩ごはんを作ってくれたのだから、ゆっくり湯舟に使ってゆっくりしたかったが、この状態だと無理そうだ。僕はため息を吐いて身体を洗ってすぐに風呂から上がった。
「あら、早かったわね、もう少しくらいゆっくりすすれば良いのに」
僕の短過ぎる入浴時間に苦笑を漏らす。
「美咲さん、サラダできましたよ」
「ありがとう、達紀くん」
「…………」
達紀さんが穏やかな声で母さんに声をかける。こうして見ると仲睦まじい夫婦に見える。だがこの男は昨日も僕に暴力を振るっている。
「……ッ…!!」
達紀さんと不意に目が合う。穏やかな表情はそのままに、冷たい視線で『余計なことをいうな』と圧をかける達紀さん。その目が防音室での出来事が夢ではないことを妙実に示していた。
「本当に陽は毎日毎日ヴァイオリンの練習ばかりで良いの?友達とかと遊ばなくて良いの?」
「別に…ヴァイオリンはやらされているわけじゃないから」
母さんは自分が作ったカレーを食べながら、僕の夏休みの過ごし方に苦言を呈する。さすがにヴァイオリンと家事だけをこなしている小学生らしからぬ僕に母さんも不安を感じているようだ。母さんの言いたいことは分かるが、友達と遊んでいてもヴァイオリンのことばかり考えてしまう僕はもう手遅れな気がする。
「本当に陽はヴァイオリンが好きね、どうせこれ食べ終わったらまたヴァイオリンの練習するんでしょ」
「うん、明日は特に用事もないし」
母さんは心底呆れたような顔で僕を見る。来月からなた学校が始まって練習時間が減るので、夏休みの間にがっつり練習しておきたい。これだけヴァイオリンに時間を費やしても僕以上にヴァイオリンが上手い人はたくさんいる。
「じゃあ、僕が陽くんの練習を見てあげるよ」
これまで黙って僕と母さんのやり取りを見ていた達紀さんが会話の中に割って入る。
「本当?ありがとう!!」
母さんは目を輝かせて達紀さんにお礼を言う。浮かれている母さんを余所に僕はこっそりため息を吐いた。達紀さんはまた僕に暴力を振るうつもりだ。ヴァイオリンの練習ができなくなったことに僕は2度目のため息を吐いた。
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