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地獄より地獄にしおりをはさみました!
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地獄より地獄
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いっそ死んだ方がマシだったかもしれない。
この状況で―身体を拘束され、男三人に囲まれた状況で―フェロモンなんて出したらどうなるかは、火を見るより明らかで、保健体育の教科書を読むより容易だった。
「ッ!!?」
久我さんの時は身体の自由がまだある程度きいていた。
だから一度は逃げ出せたのだ。
柏原さんの時は逃げられなかったけど。
まああれは弱みに付け込まれたところもあったから・・・不可抗力で起きてしまった事故みたいなものだろう。
しかしながら今目の前に転がる現状はそれとは違っていた。
今までで一番、命の危険ではあったんだろうけど、それよりもなによりも、だ。
身体を掴まれ、拘束されていることをいいことに、男が身体をまさぐってくる。
その感触が何よりも気持ち悪かった。
柏原さんに触られたときは抱かなかった強い嫌悪感。
何だかねばっこくて、ねちっこくて、俺を風俗嬢か何かと勘違いしているらしい。
まだ、腹部を触られている今のうちに逃げ出してしまいたいが、暴れれば暴れるほど、拘束は強くなるし、男が悦ぶだけだった。
今触れられているこの胸糞悪い手が次にどう動くのかなんて、さすがに分かる。
へその辺りを気持ち悪く撫でまわした後、その手はまるで焦らすようにズボンのファスナーへ向かっていった。
「やめ、やめろ!!!」
必死で抵抗しているのに、拘束は解けず、更に別の男が俺にナイフを向けてきた。
お前たちはナイフを常備しているのか。
「ひっ・・・」
小さな悲鳴を愉悦に浸ったアホ面で見ながら、男は俺のシャツの中にナイフを入れ、素肌に這わせてきた。
その金属の冷たさに鳥肌が立った。
そして
「クハッハハハハ・・・!!」
キチガイじみた奇声をあげ、男はナイフで俺の服を切り裂いた。
俺の服が・・・!
なんて心配している場合ではない。
上半身がお粗末なことになっている間に、別の男はズボンを脱がせにかかっていた。
というか、脱がされていた。
ズボンを脱がされ、しかも投げられ、拾うこともできない今、遠くにやられたマイズボンを涙を浮かべて見るしかできない。
なんて情けないんだろう。
こんな風に、男に裸に剥かれて。
今からされることに身震いした。
今すぐゲロぶちまけて死にたいと思った。
きっと、柏原さんの言ってたみたいに、『処女』を卒業するんだろうな。
そうなったら舌噛んで死ぬしかないけど。
依然、ナイフを向けられたままだから、抵抗もできず。
ただ涙を流して全てを諦めた。
ごめんなさい。
やめてください。
ゆるしてください。
空虚な言葉だけが空虚に響いた。
パンツ一丁の姿で、脚を男の手によって広げさせられ、その中心で萎えに萎えたソレに布越しで冷たい金属が当てられる。
「パンツも引き裂いてやるか」
「間違えてチンコ切るんじゃねえぞ」
「どうだかなあ。手元が狂うかもなあ!」
ゲラゲラとした嗤い声。
もう聞き飽きた。
最期くらい、可愛い女の子の声で名前を呼ばれたかったな。
「児谷!?!!」
って、そうそう。
そんなビックリした風じゃなくて良いんだけど。
それに出来れば悠介くんって・・・
・・・?
「え・・・?」
「あ、お前は・・・!!!」
どうして。
「どうして・・・?」
「良いから・・・!!」
どうして。
「ごめん・・・」
どうして。
「・・・ごめんな」
<***>
久我さんだった。
来てくれたのは久我さんだった。
もう少しで舌を噛み切るところだった俺を助けてくれたのは、久我さんだった。
唇を強く噛んでしまったせいで、口の端から血が流れた。
それを見て、久我さんは一瞬表情を失い、そして俺に着ていた黒いシャツを脱いで投げると、
俺の拘束を解き始めた。
「っとぉ!!させねえぜ!?」
「ソイツはお前が来なかったから俺らのモンなんだよ!!!」
「お前らの?・・・ハッ、笑わせんな」
抑揚のない、低い声だった。
その声と殆ど同時に、久我さんは振りかざされたナイフをかわし、奪うと襲ってきた男の肩に突き刺した。
「ぎゃああああああああああああぅああああああ!!!!!!?」
凄まじい悲鳴があがる。
それにより相手が怯んだその間に、久我さんは俺の腕に口を近付け、拘束していた縄を噛み切った。
「早く逃げろ」
そう言うと、久我さんは男に殴りかかる。
「お前にこれ以上、こんな俺を見られたくねえんだ」
「だから、頼む」
人を殴り殺すための拳で、久我さんは座った目で男を原型をなくすまで殴り続けた。
「早く行ってくれ。頼むから・・・」
「頼むから・・・こんな弱い俺を見ないでくれ・・・」
後ずさるように倉庫から逃げる。
久我さんの服を抱いて。
「こんな・・・お前を傷付けられた怒りで人を殺せそうな俺を」
「お前を失いそうな恐怖で人を殺せる俺を」
「どうか」
悲痛な慟哭(どうこく)が、俺の背中で聞こえた気がした。
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