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番外編【百目鬼神】泡になって消える狂愛に口づけを
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百目鬼『マキ!…好きだ…』
マキ『アぁ…ああん!…ひぃ…さん……す…き…あう!』
百目鬼『くッ…マキ、…俺のものになれ』
マキ『じんさぁッッアァーーーーー!!!』
夢中だった。
彼の吸い込まれるようなジュピター色の瞳が切なげに愛おしむように俺を見ている、俺に好きだと言っている。
やっと手に入れた…
やっと…
心から好きだと言ってくれる瞳…
…眠りに落ちる瞬間マキは、つぶやいた…
マキ『…消えちゃう…の…かな…?』
その声が泣きそうで、胸に深く突き刺さる。
何のことを言っているのか分かっていたが、『そんなことない…』起きたら、そう言ってやろうと思っていた。
マキの体を拭いてやり、その体に口づけた。何度も何度もするから、マキは眠りながらくすぐったそうに体をよじる。
可愛くて可愛くて、堪らず抱きしめた。
優しく頭を撫でてやると、頬を寄せてくる、眠ってるのに俺を探して擦り寄る。どこか不安げに眉がよる。あやすように撫でてやると、マキは安心したように深い眠りに落ちた。
その、安心したような寝顔にホッとして。
いつもは、こんな風に穏やかな気持ちにならない…な……と。
いつも…?
ふと、心の中がざわつく。
マキの寝顔に妙な気持ちが広がる。
スッキリしたくて、足早に風呂場に行きシャワーを浴びた。
ーザァーーーーー……
百目鬼「……ッ」
シャワーのお湯が頭から足元に流れ落ちるように、水滴と共に、マキへの激情が信じられないほど、あっさり、剥がれ落ちて冷めていく…。
『…消えちゃう…の…かな?』
マキへの愛情は、見事に消えてなくなった…
複雑な気持ちだった。
マキと愛し合った記憶も、その時自分がどんな風に感じたのか、どんな風に思ったのかは残ってるのに、何でマキを好きだと思ったのかだけが、もう、思い出せない。
ベッドに横たわるマキの体を、抱きしめたいと切ない気持ちにはならない…。
惚れ薬が切れた…。
でも…。スッキリするどころか、引っ掻き回された気分だ…。
修二を好きなのに、違う人間に愛の告白をして、抱いた…。修二が好きなのに…
修二とああなりたかった…
修二だったらよかったのに…
百目鬼「ハッ!……また、代わりにした…?俺は、また…間違いを繰り返したのか?」
俺は、昔、奏一が好きだった。
好き過ぎて自分の衝動が抑えられず、奏一に似ていた幼顔の弟、修二を強姦した。修二が泣きながらむつの名を呼んだ時、俺は始めて、修二の秘めた思いを知った。同じ悩みを持つ人間をドン底に引き摺り込んだのを酷く後悔した。そして、罪滅ぼしのつもりで相談に乗ったりしたが、修二はとても健気で1人で立っていようと必死で、修二に惹かれるのに時間はかからなかった。奏一似の顔、健気で強くとあろうとする修二。俺は、修二の隙間に漬け込んだ。お互い慰め合おう…と、そして、手に入れようとして拒まれ、修二を踏みにじった。
そんなこと、2度としないと誓った。
修二のことは諦めようとした…
だけど、修二と離れて思い知る。俺の1番汚い部分を受け入れ、そばにいてくれたのは修二だけだった…
〝あのマキ〟は、俺の理想そのものだ…、修二に見ていた理想そのものだった…
ダメだ…、だんだん訳が分からなくなってきた。マキはマキだ、修二じゃないし、あのマキは、惚れ薬を飲ませたからのマキだ、本人がそうな訳じゃない…。
セックスは慣れたものだし、薬だって使い慣れてる、あんなこと誰にでもやってるに違いない、そんなガキのことで悩むなんてどうかしてる。
マキ『神さん…』
ダメだ…あれは幻…
俺は、修二が好きだ。
しかし、昨日今日会った得体の知れないこの子供にしてやられたにしても、俺のセックスのやり方は、体に負担がかかってる、薬を飲まされたにしろ、俺がヤっちまったんだ…、捨てて行くわけにもいかない。
でも、あの瞳…マキの瞳を見たらまずい…
そして、目を覚ましたマキは、案の定ケロッとしてた。一回のセックスじゃ物足りないと平然と笑った。
マキ「ふふ♪、百目鬼さんやっさし〜♪僕の体は平気平気♪、百目鬼さんがすっごくほぐしてくれたから、全然大丈夫だったし、激しかったけど愛を感じたよ♪、百目鬼さん両想いの相手とだったら優しく抱けるよ、シミレーションできたでしょ?」
やっぱり、〝あのマキ〟はもういない。
マキ「百目鬼さんは、相手の感情が見え過ぎちゃうんだね、だから、自分に気持ちが無いとついつい意地悪して求めてもらおうとしちゃうんだね、でも両想いの相手なら意地悪しなくても大丈夫♪、ね♪」
この子供は危険だ…。
誰も俺をそんな風に言ったことなどない…、両想いなら?意地悪?こいつは俺が修二にどんな悲惨なことをしたのか知らない…
マキ「百目鬼さんの良さは、絶対伝わるから、次に好きになる人を大切にすればいいよ。それまでは、電話くれればいつでも練習相手になるからさ♪」
次に好きになる人を大切に?
さっきあんな風にセックスした相手によくそんなことが言える…、子供は切り替えが早い…。
練習相手?俺は2度と代わりは作らないと決めたんだ!
マキ「シャワーしてる間に帰りなよ♪」
百目鬼「送っていく!」
マキ「あは♪心配しすぎ、僕は、まだ足りないくらいで、今から今晩の枕探しに行くくらい元気だから気にしないで♪」
俺は、変わりたいんだ!
こんなガキとの記憶に振り回されてたまるか!
マキ「それとも、もう一晩愛し合ってみる?僕の体気に入った?修二が好きでも僕とセックス出来たでしょ♪」
修二の名前に思わず振り返り、にっこり微笑むマキを睨みつけた…
が…。振り返ったことを激しく後悔した。
マキのジュピター色の瞳が、切なげに揺れている。泣きそうに見えた。
な…!?
ダメだ訳が分からない!分かるはずもない!俺はマキの名前以外、何も知らない。
混乱。苦々しく舌打ちし、足早に出て行く。
マキ「またね♪百目鬼さん♪」
切なげな瞳と真逆の、小悪魔みたいな声が背中に響いた。
ーバタン!!
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ードカッ!!!
百目鬼は、車の中でハンドルを殴りつけた。
百目鬼「くそッ!!……」
突然割り込んできた感情に戸惑いを隠せない。強烈な幸福感の記憶だけが残り、あとは消えてしまった。
それまで自分を支配していた修二を渇望して軋む感情が戻ってきた。
修二が好きだ、修二とああなりたかった。
修二と…
まだ、マキを抱きしめた時の柔らかな感触と満たされた記憶が残ってる。
『僕に、神さんを下さい…』
あのマキはもういない。
マキを想う激情は消えた。
今あるのは修二への気持ち…
マキへの気持ちは消えた
はずなのに……
『僕の体気に入った?修二が好きでも僕とセックス出来たでしょ♪』
ードカッ!
あの瞳…、あの瞳は、泣きそうだった。
あいつも修二のように〝本当の自分〟を隠して生きてるのか?しかも、修二よりはるかに騙すのが上手い?
あの瞳と、あいつの言葉は、まるっきり逆だ。
百目鬼は、気持ちの整理が付かず、1度ホテルの駐車場を出たが、また戻ってきて、出入り口の見える場所に車を止めた。
どんなに腹が立っていても、子供をホテルに置き去りにできなかった。30分たっても出てこなければ、中に戻ろうと思っていた。
20分たった頃、一台の車が中に入っていく、しかし、降りたのは、少年が1人。中に入ったかと思ったらすぐに出てきた。マキと一緒に。
そして百目鬼は、ここで待っていたことを後悔した。
百目鬼「…ッ!!」
マキの目は、泣きはらして真っ赤だった。
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【3日後】
あの日から、〝あのマキ〟が夢に出てくるようになった。あのマキは、いつも幸せそうに笑い、俺を好きだという。
忙しい百目鬼は、車で移動しながらパソコンの書類に目を通し、電話していた。
メイ『…はい、それでは、その件はそのように、次の仕事は潜入ですか?』
百目鬼「ああ、また先生様にお世話になると思います。よろしくお願いします。それでは…」
メイ『あの!…』
百目鬼「何か…」
メイ『こないだ、マキと出かけられた時、マキと何かありましたか?』
百目鬼「!!。…どうかしたんですか?」
メイ『あの、何も無いなら大丈夫です』
マキは落ち込んでる?…
と、聞きそうになり、口をつぐんだ。
聞いてどうなる?聞いて責任が持てるのか?
俺はまだ、修二にたいしする責任を取ってない。
ふと、助手席のBOXのぬいぐるみに目が止まった。イルカとマダラトビエイが仲良く隣に並んでる。
百目鬼は、マダラトビエイのぬいぐるみだけ取って、後部座席に移した。
矢田「どうかしましたか?」
百目鬼「ん?あー、イルカと隣はちょっとダメな気がして…」
矢田「…?」
修二とマキが隣同士はまずいだろ…。
百目鬼は、エイのぬいぐるみを見つめた。口の端が上がっていて、笑ってるように見える。いつも笑ってる、マキのように…
気にはなる…。でも、だからなんだ?
気になるだけで首を突っ込むには、あの子供は危険だ…。それに、責任が持てない。
俺は、…。
矢田「百目鬼さん着きました」
百目鬼「お前はここで待ってろ…」
矢田「いえ!俺の責任っす!俺も土下座しに行きます」
百目鬼「お前は来んじゃねぇ役立たず!」
車を降りた百目鬼を待っていたのは…
奏一「約束通り来たか…」
百目鬼「…」
俺は、まだ、何の責任も取れてない。
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修二『神さん!やめて!』
告白を断られた時。俺は、修二の服を無理やり引き剥がし、修二を凌辱した。
百目鬼『俺を見ろ!こんなに感じてるくせに!』
修二『やだ!もうやめて!神さん!見てないのは神さんじゃないか!』
百目鬼『何!?』
修二『自分がどんな顔して僕とシてるか、鏡で見てよ!見えてないのは神さんの方だ!』
鏡に映っていた、俺の酷い有様…
修二『神さん、もう、こんなことやめよう。代わりなんて、初めから無理だったんだ』
百目鬼『俺は、お前を好きなんだ、奏一じゃない、修二を好きなんだ』
修二『神さんは僕を好きじゃない、それに僕は、むつが好きだ』
俺はお前が好きなんだ、信じてくれ!
俺を好きだと言ってくれ!!
マキ『神さんを僕に下さい………』
新雪ような肌、細い両の手を伸ばし、俺にしがみつく。
マキ『あっ、神さん、もっと…』
切なげな声。俺を映してる瞳。
マキ『神さん…神さん』
涙を溜めて、キュッと抱きついてきた。
マキ『神さん…もっと…神さんに溺れたい』
……マキ……
マキ『…消えちゃう…の…かな?』
その瞳からは、涙が溢れた…
ーピリリ、ピリリ、ピリリ♪
百目鬼「泣くな!!……ッ…夢…」
ーピリリ、ピリリ、ピリリ♪
鳴り響く携帯音。
それは先生からだった。
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