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(番外編)純愛♎︎狂愛24
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尾行の正体は、
清史郎さんの雇った探偵だった。
探偵事務所に探偵を差し向けるなんて何考えてるんだか…。
怒ったら、泣きながら謝ってきた。年をとって涙腺がゆるくなったみたい。でも、一度は会って現状を説明しないと、さらになんかしてきそうで、取り敢えず、会う日を作った。その代わり、会う日まで余計なことは一切しない約束。
まずは、百目鬼さんとの仲直りが先だから。
無理でも、振られても、捨てられても、言われるまでは頑張ろうと思った。修二がそうやって頑張ったんだ。僕もって♪…
バイトの時間が無くなって暇なので、修二の所に入り浸る。
修二は、なんとなく察してる。僕と百目鬼さんが上手くいってないって。今までは、心の内を誰にも見せないようにしてきたけど、バレてると思うと今更隠してもと思う。あえて取り繕らない。修二にバレてるし、この家には、僕の瞳を見透かす、むつがいる。むつは、出会って2度目に、僕の瞳が真っ暗だと言った究極の野生の勘の持ち主だ。だから取り繕ったって後々言い訳と説明が面倒くさいだけ…
それでもここに来てしまうのは…
友達って温かみを知ってしまったから…
今一人でいたら、百目鬼さんが奏一さんと一緒にいるってことばかり考えちゃう。
修二に頼んで料理を教えてもらってる。
僕はトコトンダメダメで、全然上達しない。色々教えて貰ったけど、どれも中途半端で不味い。修二と同じ材料同じ手順でやってるのに。うぅ、挫けそう。
かろうじて作れるようになったのもあるけど、マジで混ぜるだけ。でも、修二は、「愛情込めて作ったんだから良いんだよ」って励ましてくれる。
混ぜるだけの料理は、百目鬼さんと仲直りのきっかけになればと思って練習中。
本当はプリンを作りたい。出来れば、エンジェルプリンに近づけたい…、無謀?。
出来れば、10月の百目鬼さんの誕生日には、ケーキも作りたい…。出来もしないのにあれもこれも…。出来るようにならなきゃ…捨てられちゃう気がして焦ってる…。
そしたら修二が、あれもこれもやらないで、ケーキに集中したらって。
確かに、ちゃんと勉強すれば、デコレーションとかも、自分で出来るようになるかもしれない、そう思い練習を開始してみたが…。
マキ「修二、コレ、全然膨らまないね…」
修二「あぁ…」
苦笑いの修二。オーブンの中のスポンジは、もう直ぐ焼き上がり時間なのにペッチャンコのまま…。
マキ「ケーキってこんな難しいんだね…」
修二「僕ちゃんもケーキは作り慣れてないから、勉強しときます」
マキ「ううん、修二せいじゃないよ。僕も、次までにちゃんと調べとく」
修二「マキ…」
ーピリリリリ♪ピリリリリ♪
修二の携帯が鳴った。修二が席を外し、何やら電話の相手に驚いてるようす。僕は、膨らまないスポンジを眺めて百目鬼さんのことを考えてた。
百目鬼さんの、僕への気持ちも、こんなぺしゃんこなのかな?
修二「マキごめん!」
マキ「どうしたの?」
修二「兄貴が、今から来るって」
チクっと胸が痛んだ。出来れば今は会いたくない…。
マキ「…じゃあ、僕帰るよ」
修二「それが、もう着くって…」
ーピンポーン♪
…マジか…。
修二が出迎え、ブツブツ文句を言いながら、奏一さんとリビングに入ってきた。
修二「急にくるなんて言うから、何も用意してないよ。友達も来てるし」
マキ「こんにちは♪奏一さん♪」
ニコッと挨拶すると、奏一さんは僕を見て驚いた様子だった。
また出た、とか思ってるんだろうな。
奏一「なんだこりゃ…」
修二「そういう言い方をしないでよ初めて作ったんだから」
奏一「初心者がケーキか?もっと簡単なのからやればいいのに」
修二「いいの、練習する時間はたっぷりあるから」
奏一さんは、修二より遥かに料理の腕前がある、って修二が言ってた。母子家庭だから、お兄ちゃんの奏一さんがなんでもやってたって、修二はいつも尊敬してる。
奏一さんは修二に台所から追いやられ、リビングのソファーに座るよう言われた。僕と少し離れた隣に座らされ台所の潰れたケーキを眺めてる。
奏一「むつや華南の誕生日には早すぎるだろ」
修二がムスッと奏一さんを見るから、僕は慌てて笑った。
マキ「えへへ、アレは僕が作り方教わってました」
奏一「あ…、ごめん」
マキ「いいえ、僕料理の才能ないみたいで、簡単なのから教わったんだけど駄目で、だったら作りたいものを何度も練習したほうがいいって修二が手伝ってくれてるんです」
その時。
奏一さんが僕を妙な目で見た。
そして落ち着かない様子で質問してくる。
奏一「付き合ってる人の誕生日ケーキかなにか?」
その違和感に目を瞬く。もしかして…
その違和感の正体を確かめるために、あえてへらへら答えた。
マキ「ふふ、そうなんです♪手作りは喜ぶよってむつに言われて。自分が作った料理写メってノロケて来るんですよ、ほとんど修二に手伝ってもらった癖に♪」
奏一「あー、それ俺にも送られてきたよ」
マキ「ふふっ、お兄さんに?むつ君て面白いな♪」
奏一「マキ君は、百目鬼のために作るの?」
さりげなく、ズバッと言われ、やっぱりって思った。奏一さんは、僕と百目鬼さんの関係を探ってる。
奏一さんの真意はどこにある?
奏一さんは、今日何しに来た?修二に何か話しがあるように見えた。妙にソワソワ修二を見てる。修二に聞きづらいこと…
そして、僕とは偶然会ったのに、僕と百目鬼さんのことを気にしてる…
僕はとぼけることにした。
マキ「百目鬼さん?」
瞳を瞬いて、不思議そうに首を傾げてから、ありえないとケラケラ笑ってみせる。
マキ「あはは、百目鬼さんにじゃないですよ。僕そもそも百目鬼さんと〝付き合ってないし〟」
奏一さんが、あからさまにホッとした。
その安堵の表情に、嫌な予感がジワッと広がる。
僕と百目鬼さんが付き合ってなくてホッとした意味…。
奏一さんが、僕と百目鬼さんが付き合ってないと知って、さらに何かを一所懸命考えてる。
僕は本題の質問を放り込んだ。
マキ「ウフフ♪そんなに僕と百目鬼さんのこと気になりました?」
奏一さんは図星だとばかりに驚いて慌てた。
奏一「…いや、そういうわけじゃ…」
動揺が丸わかりだ。
マキ「じゃあ、百目鬼さんが気になる?」
奏一「はえ?、そうじゃない」
目を逸らした奏一さんは、複雑に顔を歪めた。
心が冷えていくのを感じる。
一番の不安が、現実味を帯びてる気がする…
ありえないだろうとか、そんなことないとか、ちゃんと思えてるけど。
現状、僕は百目鬼さんに避けられてる。
そして、奏一さんは、百目鬼さんに男としての興味を持ってる。
きっと、和解が進んできてるだけ…
そう思いたい…、それが冷静な判断だ。
全部分かってる。
奏一さんは、百目鬼さんと僕が付き合ってたら、きっと、〝修二の友達と!?〟って怒ると思う。百目鬼さんはそれに怯えてた。それも分かってる。
だけど、小さな小さな不安は、今の僕には心を蝕む寄生虫のようだ。
ありえないと思いながら…、奏一さんは、和解が進むにつれ、百目鬼さんが気になってるんじゃないか?修二が百目鬼さんを憎めないように、百目鬼さんは奏一さんにとって良き兄貴的存在だったんじゃないか?
百目鬼さんも、奏一さんに好意を寄せられて、僕と付き合ってるのが馬鹿馬鹿しくなっちゃったんじゃないか?
奏一さんは今日、修二に百目鬼さんのことを聞きに来たんじゃないんだろうか?
あんなに嫌悪感丸出しだったのに、百目鬼さんに興味を持ってる。
それってもしかして……両思い?
ありえないと思いながら、考えが止まらない。不安は増殖し、僕を蝕む。
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