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◆にしおりをはさみました!
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◆
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「逃げ回るだけかよ、ヘナチョコ!
ハハッ、言った割にはたいしたことねぇ
なぁっ!」
ブンブンと無駄に拳を振り回す上級生は
拳を避ける高取に誘導されていることにも
気づかない。
二人が離れたところでは、後からきた九
条と吉光が倒れたままだった野坂と尾山を
揺り起こしヒデと島崎に肩を貸して立ち上
がらせている最中だった。
そのうちトンと教卓の前まで来た高取は
足を止め、チャンスだと思った上級生が拳
をひねりながら自らの体重と反動をのせて
渾身のパンチを突き出してくる。
彼はそれを見切りながら最小限の力でそ
れを掴み、上級生がかけた重みに自分の力
を加えて足払いを食らわせる。
完全にバランスを失った上級生は教卓に
突っ込むようにしながら倒れ、膝をついて
すぐには動けずにいるところに重い拳をそ
の腹に叩き込んだ。
「ぐぅッ…!」
カエルを潰したような野太い声がその口
から洩れたが気絶はしなかったらしい。
高校に入学する前まではとある拳法を習
い、同じ所に所属していた生徒の顎を練習
中に骨折させたこともある彼の筋力は全盛
期と比べれば鈍ったとはいえ健在のようだ。
分厚い脂肪に守られた腹は鈍った拳くら
いでは気絶できなかったらしく腹を押さえ
て呻いている。
高取はおもむろにポケットからペンを取
り出すと、なみなみとインクの溜まったペ
ンのキャップを口に咥えて外す。
腹を押さえる手を掴んで地面に縫い付け
るとインクで潤うペン先で上級生の手の甲
にデカデカと×を書き込む。
それを〇で囲んでいる間に何をされてい
るのか気づいた上級生がおちょくられてい
るとでも思ったのか鼻息を荒くして高取の
足に半分踏みつけられていた手首を引き抜
く。
その拳で再び殴り掛かってこようとした
その刹那、教室のガラスが割れる音が響き
飛び込んできた野球ボールがその拳を直撃
した。
「ぐぎゃあああ!!」
明らかに変な方向に曲がった手首を引っ
込めた上級生は、床の上をのた打ち回る。
そんな上級生の顔にも同じように×を書
いて〇で囲むと、再び窓を割って入ってき
たボールが今度は左頬にのめり込んだ。
「ー…ッッッ!!!」
もう痛みで喚くこともできないまま上級
生は床の上を転がった。
頬骨を砕かれたのか、白目を剥く上級生
の口からはだらしなく唾液が零れて床を汚
す。
ひとしきり転げまわって動きを止めた上
級生の左手を踏んで床に押さえつけると、
今度はその手の甲にも同じように書き込ん
だ。
〇で囲んだ×…“的”だ。
立て続けに飛び込んできた3球目が上級
生の手の甲の骨を打ち据えた時、もうそれ
は偶然ではないのだとその場にいた全ての
人間が察した。
人の力の及ばぬ何かが上級生に害をなし
ているとしか思えなかった。
高取がキャップをしめたペンを再びポケ
ットに忍ばせて立ち上がった。
上級生の手に落書きしたことは、机の影
に隠れて本人以外には見えてはいない。
だがしかし、この印が消えるまでの間、
何かしらの害がこの上級生を襲い続けるだ
ろう。
マジックの効果は24時間。
その効果を消す為には彼の精に濡れなけ
ればならない。
だがそんなことは今すぐ大地震がこの校
舎を襲うよりもありえないことだった。
24時間後までに上級生の両手や頬がど
れだけ痛めつけられてどんなむごいことに
なろうとも、それこそ彼には露ほども興味
はないのだから。
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