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228にしおりをはさみました!
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228
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「僕は氏原先生の事が好きだから。氏原先生を傷つける奴は大っ嫌い。」
今さっき、こいつを確かに殴ってやろうと決めたはずなのに、こんなに近くで声が聞こえても、体力の限界を超えてしまった身体は倒れないように保つのがやっとの状態で
だからだろうか、こいつの言葉を冷静に聞いていられる。
「お前は氏原先生を傷つけた。」
あぁ、その通りだ。
酷い言葉も言ったし、無理やり避け続けた。
「なのに自分が一番傷ついてるのはなんでだよ。」
重くのしかかるトモナリの言葉。
自分が傷ついてる理由?
……そんなの。
「……幸人が………幸人が作ってくれるから朝飯食べるようになって、時間になれば腹が減るようにもなった。
仕事が楽しいと思えて、でも週末はもっと楽しくて、家で酒飲んでても一人じゃないし
温かくて凄く凄く幸せだった。
何より特別なんだ、本当に…」
「ま…待って。ねえ、待ってダメ、ねえってば。」
止めどなく溢れる言葉は今までずっとずっと思い続けて、声に出さなかったものだ。
一度出たらもう止まらなくて、
真っ赤な顔の幸人に制止されてもまだ溢れそう。
でも、だから。
だから怖いんだ。
また繰り返したら、また居なくなってしまったら。
「この先幸人のいない未来が来るのが怖い。……あの時みたいに、幸人も壊れていくんじゃないかって。
俺の知らないところで、知らないうちに……。」
「康明……」
だって幸人はこんなに華奢で、メンタルも弱くて。
俺がもっと強ければ、幸人の告白を喜んで受け取っていたのに。
「俺は…お前の隣に立ったところで、あらゆるものからお前を守ってやれる自信がない。
もっともっと強くなきゃいけないのに…。
お前の手を…離さないで済むくらい。」
やっとの事で、肩に置かれた幸人の手に自分のそれを重ねると、その上にもう片方の手を添えられて包み込まれるような形になる。
おそるおそる振り返ると、目に涙をいっぱいためた幸人が優しく笑った。
「康明はばかだなあ…。僕は康明が思ってるほど弱くないよ。康明も、もうあの頃とは違う。」
「……でも…っ俺は……」
「僕は幸音じゃない。」
幸人の言葉は正論で
思わず、返す言葉を失った。
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