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夏の始まりにしおりをはさみました!
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夏の始まり
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校門を抜け、外にある駐車場に向かう。長期休暇前は帰省する生徒で混むので、この時だけは駐車場が解放されるのだ。
しかし、その景色がまた圧巻なのである。
秀明学園の生徒がお坊ちゃんばかりなので、そこに停めてある車のほとんどが黒塗りの高級車なのだ。日本製、外国製、様々であるが、外国製の車の方が多いだろうか。
これだけ辺り一面黒いと、自分の家の車を探すのは一苦労だ。大抵は運転手が外に立って待っていてくれるが、そうでない場合はナンバープレートを頼るしかない。
「この光景はもはやギャグだよな」
「本当ね。このくらいあると、なんかもう安っぽい」
それぞれ勝手なコメントをつけながら、京の家の車を探す。
言い忘れていたが、今日から1週間、京の家でお泊りなのだ。
8月に入ると京は一族の集まりで多忙になり、お盆からの旅行まで会うことができない。
その事情を汲んで、父は7月の間は仕事に出ずに京といることを許してくれた。無論、父は俺たちの関係など知らないのだが。
京の家の専属運転手を見つけると、キャスターをトランクに入れてさっさと車に乗り込んだ。
車内はひんやりとしていて、際限なく流れていた汗が一瞬にして冷やされる。
「度々すみません。よろしくお願いします」
申し訳なくそう言うと、
「いえいえ、京様のご友人である綴様をお運びするのも私の役目でございます。どうぞお気になさらず」
運転手さんはそう言って車を発進させた。
車内には雰囲気の良いクラシックが流れており、なんだか心地よくて眠くなってくる。
外を眺めながらウトウトしていると、不意に左手を触られた。
驚いて京を見ると、にっこり微笑んで人差し指を口の前に持ってくる。
指を絡めるように繋がれて、そしてそれを運転手さんに隠すようにするので、なんだか胸がドキドキとした。
涼しい車内で、そこだけが熱を持っていた。
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