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努力の人間 < Side瀬居にしおりをはさみました!
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努力の人間 < Side瀬居
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疲れた身体を引き摺り、ホテルへと向かっているタイミングで、玄弥からの電話が掛かってきた。
玄弥は、悪くない。
わかっているんだ。
だけど。
懐里が辛いときに傍に居られない自分に、腹が立つ。
「戻りますか?」
電話を切った直後、声を掛けてきたのは、一緒に仕事をし、オレの補佐をしてくれている那須田 丈陽(なすだ たける)だった。
言葉に向けた瞳に、那須田は、鞄のサイドポケットに手を入れる。
「いや。仕事ですから」
くっと奥歯を噛み締め、気持ちを切り替えるために、頭を横に振るった。
βのオレは、人の何倍もやらなければ、迷惑をかけてしまう。
投げ出してしまえば、今までの努力も簡単に泡となる。
那須田も同じβで、努力の人間だ。
オレの何倍も仕事に尽力し、今の地位、会社の主戦力としての立場を築いたのだろう。
αの賢理の補佐をするのなら納得も出来ただろうに、7つも年下の…βのオレの部下として働かなければいけないのは、心外なのではないだろうかとさえ思う。
鞄からA5サイズのスケジュール帳を取り出した那須田は、スピンを引き、それを開く。
「問題ないですよ。今日の予定は、終わっていますし、明日の予定は……」
スケジュール帳を捲るしなやかな指先。
とんとんっと軽くスケジュール帳を叩いた人差し指は、すっとそこを離れ、ぱたんっと音を立て閉じられた。
「私1人でもこなせます。心配されて上の空でお仕事される方が、問題です」
ふふっと上品に笑う那須田。
普段は、父の秘書をしている那須田。
以前、ユカリという名を呼び、帰れないと謝っていたコトがあった。
話す雰囲気から、その人物は、那須田の恋人なのだろうと察していた。
那須田だって、早く帰ってその恋人に会いたいだろう。
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