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灰色の瞳のトラ猫のお話27にしおりをはさみました!
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灰色の瞳のトラ猫のお話27
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「トラ君、こちらへ…」
そう言って、また車に乗せられる。
「あのジジイ怒ってたの?」
トラは、龍崎にそう尋ねたが、江島に言われる。
「乗ってからにしろ!バカっ!」
「痛っ!」
強めに小突かれる。
車は走り出した。
「ええ…私が、勝手に組の抗争に発展させ、
勝手に本間を殺したので、怒られてしまいました…」
龍崎は、機嫌が良さそうだった。
「でも、トラ君を連れて来る事を条件に、許してもらいました」
なぜ、それで許してもらえたのだろう。
「よくわかんねぇけど、良かったな」
「ええ…ボスの山猫さんには、感謝しなくてはならないですね」
なんで?
トラはきょとんとして龍崎を見ていた。
「もし、山猫の親分さんが、トラ君を育てて下さらなかったら…私は、トラ君と出会う事もなかったですから」
龍崎は穏やかだった。
「…うん」
それと、これとは違うような気がして、トラは言った。
「あのさ…俺ってどうなったの?」
龍崎は『何も聞かされてないんですか?』と言ったので、トラは頷いた。
「そうですか…」
龍崎は正直に言ってくれる。
「私が、トラ君の事を買いとりました」
「え…」
トラはじっと龍崎を見つめる。
「…ですので、トラ君の身柄は龍崎組…
ひいては、九頭龍会となった訳です」
山猫とそう言う話し合いがされたのだろう。トラが入院している間に、何の許可もなく。
「…ふーん」
トラは、興味が無いと言った様子で返事をした。
「疑問とか、不満とかなにかありますか?」
トラは、首を振る。
「別に…」
トラは続ける。
「俺は俺だし」
灰色の瞳で、外の風景を見つめる。やはり、乗り物は好きじゃない。直に酔う。どんなに滑らかに走っていても。
「生きてるウチは自由にするだけだよ」
龍崎はトラに手を伸ばした。
「トラ」
顎を掴んでトラの視線を自分の方へと向ける。
「なに?」
その奥深い灰色の瞳が、深い闇色の瞳と絡まる。
「…私に飼われるという意味が分かりますか?」
細められた真剣な龍崎の瞳をじっと見つめたトラは言う。
「俺、龍崎の事好きだよ?」
何かを悟ったのか、トラは龍崎にそう言った。龍崎は、突拍子もないトラの言葉に、完全にそれを失った。
「でも一個気になってる事があるんだけど…」
トラは、ずっと気になっていたことを思い切って、尋ねてみる事にした。
「なんなりと」
龍崎はあくまでも、穏やかだ。
「すっごい、今更なんだけどさ…」
「はい」
トラは、自分で思うよりもずっと緊張していた。
「魚里と結婚の約束ってどうなったの?」
魚里組の娘と結婚するという噂をニャロメが言っていた。
おそらく、九頭龍会の絆をもっと強固なものにするための政略結婚だ。
結婚にそれ以外の特別な意味なんて無いようだった。先ほどあった、会長がそうさせたかったのだろう。とても、現代の考え方とも思えないと、ミケがぼそっと言っていた。
「…ご存知でしたか…」
龍崎は、声が小さくなった。
「あまり、不安にさせたくなかったので、黙っていたんですけど」
触れてほしくなさそうでもあった。けれど、トラは聞いておきたかった。その答え次第で、自分がどうなるのかが分からず、トラは不安だった。
「魚里組との縁談の話は無くなりました…会長は、それについても、腹を立てていたので、最近の不祥事の落とし前をつけに、どら猫を連れて来いと…」
ドラ猫とは、きっとトラのことで間違いなさそうだった。
「そもそも、魚里との縁談はあまり美味しい話ではないんですよ…」
美味しい、美味しくない…
という次元で、結婚をしてしまうものなのかと、トラは不安になった。
「結婚って、好きだからするもんなんじゃねーの?」
トラの言葉に、龍崎はくすりと笑った。
「ええ…そうですね。だから、私はトラくんと結婚しようと思って」
にっこりと微笑んだ龍崎に、トラは固まった。
「なっ…!」
「やっぱり、いくら紙切れ一枚とはいえ、
結婚は一生を左右すると言いますし、愛する人としたいですから…」
龍崎の思わぬ告白に、トラは顔を赤くした。
「まぁ…魚里の破談に関しての損失は、本間組を潰した事で、なんとかなりそうなので、一石四鳥くらいにはなりそうです」
その中にトラは含まれているのだろうか。
「あと、これはトラくんの左手の薬指を私が予約します」
龍崎はトラの左手をとると、薬指に銀色の指輪をはめた。
「!?」
トラは、かーっと顔を赤くした。龍崎の左手にも同じ銀色の指輪がハマっていた。
「…如何ですか?」
龍崎は、頭が良い。魚里との婚約が、公にはなっていないものの、そんな噂がトラまで広まり、尚かつ、トラがそれを聞いて不安に思っていることまで想定していて、一番信じてもらえる形を龍崎なりに考えたのだ。万が一にも、トラが龍崎から離れていかないことまでを計算していた。
「…」
トラは、龍崎と視線を会わせた。灰色の瞳が、今は青みを帯びて潤んでいる。
「そんな表情をして、見つめられると襲いたくなります」
穏やかに苦笑する龍崎は、トラには、どこまでも優しい。けれど、トラが視線をそらすこともゆるされない。どうあがいても、今のトラは、『YES』という言葉以外は、許されないのだ。龍崎は、そのためならなんだってする。彼は、他でもないヤクザなのだ。
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