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18歳以上ですか?
④にしおりをはさみました!
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④
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別に頭がおかしくなったわけではない一応言い訳しておきますが。
作戦的なね、うん。
とりあえずトイレと言って隙をみて逃げ出すという安易な考えは恐らく通用しない。
この部屋の向こうがすぐ外に繋がっているならば話は別だが、ここの高さ(多分2階)からしてそれはまずありえないなと判断した。
てことは部屋の向こうには更に部屋があって、そこには最低でも一匹の獣が駐在していると俺は考えた(というかサタンがそう言ってた)。
ボスザルのような超人的な身体能力があるならば一人くらいちょちょいっと躱せるんだろうが、いかんせん俺だ。
そんな事天と地がひっくり返っても成し遂げられない。
なので。
ザ・仮病。
うん、これくらいしか考えつかなかったごめん。
こう、悶え苦しむ俺を見て、多分きっと死なれたら困る獣的に救急車なんかを呼んでくれたりするんじゃないかと。
その為には臨場感が欠かせない。
こいつほんとやばいんじゃね!?っていうリアリティーな演技が求められる。
だからこうしてだな、スクワットをして汗を流して呼吸を荒くして、その後痛いと叫んで今にも死にそうだという演出をするのだ。
どうだ、完璧だろう。
「く…っ、そ、そろそろっ」
50回程頑張っただろうか。
俺の額からあっという間に汗が滴り落ちてきた。
太ももなんかぷるぷるしてお願いもうやめて!っていう声が聞こえなくもない。
そして呼吸も見事に荒く弾み、今だと俺はその場にうずくまって腹を抱えた。
「い、いた…っ」
声が小さいぞ祐介。
もっと腹の底から絞り出せ!
「い、痛い…!」
だめだまだ足りん。
叫ぶんだ、ほら早く!!
「い、いたたたた!!!ああああ痛い!!」
ほら、やればできるじゃないか。
そのうちどうしたとドアが開かれる筈だから、本番はそこからだぞ。
頑張れ祐介!!
その後2回ほど同じようにして叫べば、案の定どうしたとドアが開かれた。
そして獣は、汗を大量に流しはあはあと苦しそうに悶える俺を見て、見事に勘違いをしてくれた。
「お、おい、具合悪いのか?」
「痛い!死ぬ!!」
「ちょ、やっぱあのパン腐ってたか。3日前のだったからな」
「………」
おいいいいいいいいい!!
俺結構うまいとか思っちゃったじゃんどうしてくれるんだ!!
何こんな状況で自分の味覚音痴発覚させられてんの。
ごめん結構ショック受けてる。
「きゅ、救急車を…っ!」
しかし今はそんな事どうでもいい。
取り敢えず俺は懇願してみた。
「や、救急車とかムリだろ」
「ああああああいたい!!いたいよううう!!」
「ちょ、おい、と、取り敢えず薬!薬!」
「え、や、あの、ちょっと…」
薬薬とうわ言のように呟きながら、獣は部屋から出て行ってしまった。
ああああもう何だよバカ!!
救急車だろ普通!!
しかし、俺は見逃さなかった。
ドアが開いている。
痛い痛いと呟く事を忘れず、俺はそっと外を伺い見た。
さっきの獣はどこへ行ったのだろう、見当たらない。
部屋の外は廊下になっていて、右に首を捻ると奥にリビングらしき場所が見えた。
多分獣は薬を探しにキッチンへ行ったのだろう。
そして左に首を捻り、そこに出口を確認した俺は忍び足で部屋から出た。
外からカギなんて事は考えにくい。
だから多分あっさり開くはず。
脱出出来るかも知れない、しかも自分一人の力で。
そう思ったら、心臓がばくばくと唸りだし、手の平にも大量の汗が噴き出してきた。
玄関のノブに手をかける。
獣はまだ戻らない。
この際もう音なんてどうでもいい、外に出てしまえばこっちのもんだ。
固唾を飲みながらそう一気に鍵を開けノブを回した。
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