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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入21
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「それは勿論でございます。先程の勝負、実は私も拝見させて頂いていたのですが、素晴らしい限りでございました。その後の采配もお客様の懐の深さが垣間見え、従業員一同、感嘆の極みでございます」
「そう言われると照れてしまうな。なに、今晩存分に楽しませて貰ったお礼です」
「ふふふ。やはり素敵なお方だ。その赤銅色の髪を見るに、もしやグランデル王国生まれの傭兵様ですか? グランデルと言えば、武具を含む製鉄技術とその扱いに優れたお国だ。もしや、貴方も相当の手練れなのでは?」
「はてさて、傭兵という見立ては、さすが顧客をよく見ていらっしゃる、ご明察です。しかし、手練れかどうかは、私には判断致しかねるな。そこはその時々の依頼主の判断にお任せするとしよう」
少しいたずらっぽく笑って見せた男に、デイガーと名乗った青年もつられたように笑う。
「それでは、私はこれで失礼する」
「はい。お気をつけて」
深々と一礼をしたオーナーに軽く会釈をしてから、男はドアマンに開けられた扉を潜った。二重扉を抜けた先にある薄暗い階段を上ってバーに入り、覚えのあるバーテンダーにひらりと手を振ってから店を出る。そのまま夜風を楽しむようにのんびりと歩き、店から十分に離れたところで、男の唇が小さく動いた。
「誰かつけているものは?」
微かな呟きに、男の髪を風が撫でた。
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