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はじまりにしおりをはさみました!
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はじまり
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中は洒落たバー。客席側は薄暗くカウンター側には上から数ヶ所ライトが照らされている。カウンターでは店長が一人酒を作っていた。客席を見渡すが客は豹以外いない。当たり前だ。こんな昼間の時間から酒を飲む奴など普通の奴ではない。かくいう豹も酒を飲みに来たわけではない。
「個室で先客が待ってるぜ」
席を見渡し目的の人物を探していた豹に、カウンターにシェイカーを置いた店長が話しかける。
店長が言う個室、とはこのこじんまりしたバーに一つだけある隠し部屋。場所は店長が立つカウンター横の物置、その下。地下室と言った方が伝わりやすいだろう。
「ありがとうございます」
店長に礼を言い、物置に入る。物置と言ってもワインや酒を貯蔵しているので思うほど狭くはない。"見せ掛け"のワインセラー、その前に立つ。一見ずらりと高級ワインが並んでいるがその扉を開けると地下室への階段が続いている。つまり高級ワインは良くできた絵である。ここに初めて入った者は騙されるだろう。
コツコツと履いてきた黒のレザーブーツが鳴る。地下室な為か地上よりも響く音。階段を降りきるとそのまま真っ直ぐ行く、すると一つだけ明かり灯った部屋が見えた。薄暗い地下室には不釣り合いな上質な扉。
目的の人物はこの部屋に居るのだろう。
「おぉ、やっと来たか豹。待ってたで」
「それはそれは、お待たせしてすみません」
「そないなこと思ってないやろ......相変わらずやな。さすが「チェーン」のリーダー。隙がねぇな」
部屋に入るや否やソファーに足を組んで座り喋りかけてくる男
ニヤニヤとこちらを伺う顔の男は一応豹の友達だ。
「ふふ。あなたにそう言って頂けるなんて光栄ですね」
「また思ってもないこと言いやがって、まぁそれでこそお前か。ほら、そこ座り」
男に促されるまま向かい合うソファーに腰かける。
「で、なぜいきなり連絡をしてきたんです?あなたからの連絡なんて久しぶりだったので少し驚きましたよ」
「何となくや、何となく」
「そうなんですか?......本当は?」
見え透いた嘘を吐く男に豹は再度尋ねる。
豹が男と出会ったのは皇や叢、京介、怜斗、帝斗と出会うよりも前。
最低でも3年の付き合いはある(一応)友人の嘘くらいは見抜ける。
「はぁー、んでバレんねん。これでも嘘は俺の十八番なんやで?」
見抜かれた嘘に男はため息を吐いた。
男の名は鶴ヶ池銀。年は豹と同じで、Lie(ライ)と呼ばれるグループのリーダーだ。Lieの語源はこの目の前の男、銀が根っからの嘘吐きだから。その嘘で騙される奴も少なくない。
「嘘の吐き方が下手なんですよ」
クスクスと豹は笑った。
もちろんそう思っているのは彼だけ。
銀の嘘を見抜けるのは実際のところ豹くらいである。
ガシガシと頭を掻いた銀。
「......そんなこと言うのお前くらいやで、豹」
「そうですか?あなたの嘘は見抜きやすいですよ」
「ったく、そんなら本題入るで」
「えぇ、どうぞ」
先程までの雰囲気が少し変わる。
二人は対立するグループリーダー同士ではないからぽんぽんと会話が弾むが、普通のグループリーダー同士ではぴりぴりと張りつめた空気が流れる。当たり前だ。どのグループもたくさんの称賛を貰うため、自らの存在を知らしめるため、地位が欲しいが為に潰しあうのだから。敵と馴れ合うなどあり得ない。
だから、先程までの空気がおかしいのだ。
一部玲央という例外が居るが......。
しかしこの穏やかな豹を前にして喧嘩を売れる者はまず居ない。居るとすればそいつはただの馬鹿だ。そういう意味であれば豹も例外に入るだろう。ちなみにだが玲央と銀は最悪に仲が悪い。彼らの前で互いの名前を出すとまぁ大変なことになるだろう。いや、なるのだ。
「豹、お前crudeっちゅうグループ知っとるか?」
「もちろん知ってますよ。と言いたいところですが初耳ですね」
「だろうな。お前ライバルグループのことなんて眼中にねぇもんな」
「眼中にないって事もないのですが......興味はないですね、すみません。それでその方達がどうしたんですか?」
「最近別系列のグループとくっついてな、共闘してんねん」
「仲がよろしいようですね」
共闘したということはそのグループ同士の連携が強まり、結束力ができ、さらに言うと戦力も強まったということ。同系列のグループと共闘するならまだしも全く無関係のグループ同士が共闘しているということはなかなかに珍しいことで、他グループにとっては警戒対象だ。無論、銀のグループも警戒している。
ただ山の上の豹にはその情報は届いていない。その情報を手に入れるのは簡単なのだろうが豹本人に興味がないから情報が届かないのだ。多分だがチェーンのメンバーは知っていると思うがあえて豹には伝えていないのだろう。何せ彼らは豹第一。いくら強い自分達のリーダーとはいえ余計な事に巻き込まれたたくないのだろう......。
とにかくそんな大変な事を分かっていながら目の前で仲がいい、とのほほんと微笑む豹を銀は呆れた目で見た。
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読んでいただきありがとうございました(*^-^)
一応人物紹介
名前 鶴ヶ池(つるがいけ)銀(ぎん)
年齢 高校二年生
その他 Lie(ライ)というグループのリーダー
次のお話も読んでいただければ嬉しいです。
次のお話もよろしくお願いします。
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