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F-0823 シュウ (13)にしおりをはさみました!
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F-0823 シュウ (13)
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シュウが静かに涙を流すのを見ていた。時折懐かしいと言って幸せそうに微笑む。
「カナメが、いなくなったとき、何が起こってるのか初めて気づいた。先生たちは、ターゲットを選んで遊ぶ。それはいつ終わるか、わからない。飽きたら次のターゲットを決める。その繰り返しだった。俺は・・・カナメが守ってくれてたから、ターゲットにならなかった。」
肩をさすって続きを促す。涙を拭いて息を吐いた。話すのが辛いのだろう。苦しそうに、泣くのを耐えて口を抑える。抱いている肩は震えていた。
「カナメが、俺を・・・俺に何もしないように、代わりになってくれてた。」
思いだすのが辛い、助けてあげられなかったのが悔しいと言って泣いている。大好きだった先生全てが裏切り者だった。子供たちへの虐待に加担する者、見て見ぬふりをする者、信じたくなかった。カナメ以外にも被害者はいたのだそうだ。一人一人が脅され、誰にも相談できずに、次のターゲットへ移行する。殴る蹴るの暴力を振るわれていた子もいれば、性的暴行を受けていた子もいたらしい。カナメは両者だった。
「カナメは、もういない。・・・事故で、死んだ。俺は、カナメを・・・守って、あげられなかったっ」
カナメがいなくなってシュウは力が抜けたように生活していたのだという。あの頃の記憶はほぼない。気づいたら朝になっていて、気付いたら日が傾いていた。毎日が苦痛で、毎日自分を責めた。そんなとき、次のターゲットにシュウが選ばれた。
「俺は、抵抗した。初めて呼ばれた日は、相手が一人だったから・・・殴って、気絶させた。」
「う、わ・・・」
気絶させるまで人を殴ったことに絶句した。思わずシュウの右手を撫でると力が抜けたように笑った。暴力を振るわれたり、性的虐待があったのは、何回くらいか聞くと、されたことがないと首を振った。
「そういうことされそうになったら、物投げたり、暴れたりしたから。手が、青くなるまで、先生たちを殴った。」
言葉が出なかった。抵抗して、何度も危機を回避してきた。怒りと、悔しさが、シュウを強くしたのだろう。
「そしたら、ここにつれてこられて・・・。」
「ああ、なるほど・・・」
だから暴力児という枠に入れられているのだろう。手が付けられない子供は、他へ飛ばす。聞くところによると、抵抗した子は自分だけではないらしい。もう一人、五つ上の子がどこかに行ったと話す。
「なあ、言うこと聞くから・・・お願い、聞いて。」
「いいよ。」
「ひまわり園の子、全員、助けてほしい。俺の家族なんだ。」
自分のためのお願いではない。シュウの知らないところで今でも苦しんでいる家族を助けてほしいと願った。誰にも頼らずに、一人で悩み続けていたシュウが、一人の大人を頼ってくれた。それが何より嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。
「いい子だな、お前は。」
半ば突進するように抱きしめると、シュウは声を上げて泣いた。辛かったこと、悲しかったこと、全て吐き出してくれたシュウに感謝をするように頭を撫でると子供のように泣いていた。
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