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ミキのオムライスにしおりをはさみました!
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ミキのオムライス
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「みーたん、オムライス出来たよー」
ガチャリと扉が開く。
姉ちゃんがノックをしないのには今更慣れっこだったが、考えにふけっていたせいでびくっと反応してしまった。
「ああ、姉ちゃん……」
「あらあら、お邪魔だったかしら?
……ってオト君、寝てるのね」
「え?」
視線を落とすと、オトはおれのふとももに頭をもたげて、すやすやと寝息を立てていた。
ついさっきまでは起きてたのに……
っていうかあんなに寝たのにまだ寝足りないのか?
「うふふ……
やっぱり、ミコトの傍だと安心するのね」
「……そうなのかな」
「ええ、そうよ。
オト君の分もご飯用意したけど……この様子じゃ、食べないでしょうね。
起こしちゃうのも可哀想だし」
「あー、起こして連れてくから、良いよ」
「そう?
じゃあ、お願いね」
オトを起こして居間に行くと、既に母さんも姫和も食卓についていた。
姉ちゃんに座るように促されて、姉ちゃんの向かい側に座る。
おれの隣に座ったオトと向かい合う形になってしまった姫和は、顔を真っ赤にして俯いていた。
「それじゃ母さん、お願いします」
姉ちゃんが姿勢を正して言うと、母さんはおれ達の顔をゆっくりと見渡してから、そっと両手を合わせた。
「今日も私達を生かしてくれる自然の恵みに感謝しましょう。
いただきます」
いただきます。
母さんの言葉に呼応するように、俺たちも手を合わせる。
オトはいつもおれが家でしているのを見ていたからか、ごく自然な動作でおれたちに倣い、いただきますと呟いていた。
「さっ食べよう!
みーたん、早く食べて食べて!」
「はいはい」
姉ちゃんに急かされて苦笑しつつ、おれはスプーンでオムライスをすくって口に運ぶ。
久々に食べた姉ちゃんのオムライスは、前に食べたよりも美味しく感じた。
ふわふわでとろっと甘く、ご飯とも良く絡んでいる。
姉ちゃんは元々料理上手だけれど、オムライスはより格別だ。
「美味しい」
「でしょ?
ほら、オト君も早く食べてよ!」
隣を見ると、オトは不思議そうな表情でオムライスを眺めていた。
おれと目を合わせると、微妙な顔をして首を傾げてくる。
『なに、これ?』
ふいに声が頭に響いた。
こういうときにテレパシーを使ってくるなんて、オトも意外とデリカシーがあるんじゃん。
とはいえ、おれはテレパシー使えないから口頭で答えるしかないんだけど。
「取り敢えず、食べてみなよ」
小声で促すと、オトはちょっとためらいながらも、以前よりは迷いなくスプーンをくわえた。
そして余程美味しかったのか、目をきらきらさせて、「美味しい」と零した。
オトが素直に美味しいって言うなんて初めてだ。
姉ちゃんの料理はやっぱりすごい。
姉ちゃんはオトの言葉に満足そうに頷いて、今度は隣に座る姫和の顔を覗き込んだ。
「どう、ひよりん?
姉ちゃんのオムライス美味しいでしょ?
……って、どうしたのあんた?」
姉ちゃんの驚いたような声につられて姫和を見ると、さっきより増して真っ赤な、まるで茹でられたような顔をして唇を引き結んでいた。
「……っ!」
そして突然、パチンと破裂したみたいに立ち上がると、なにも言わずに部屋を飛び出して行った。
「……どしたの、あの子」
姉ちゃんはぱちぱちと目を瞬いて首をかしげる。
一連の出来事を黙って眺めていた母さんが、ふいにくすくすと笑った。
「なぁに、母さん?」
「うふふ……
あの子は本当に、素直に感情をおもてに出すのね。
初々しくて可愛いわ」
「……ははーん、そういうこと」
姉ちゃんは合点がいったようにあごに指を添えて頷く。
そしてわけが分からずきょとんとしているおれたちに向かって、苦い笑顔を向けた。
「あの子は意外と手強いかもねぇ。
どうする、みーたん?」
「……は?」
おれが姉ちゃんのその言葉の意味を理解するのは、もう少しあとのはなし……
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