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異変20にしおりをはさみました!
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異変20
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「……あの、」
努めて普段通りの声を出せば、ギルヴィスは人当たりの良い笑みを返してきた。
「何でしょうか。私に答えられる範囲のことでしたら、お答えしますよ。そうした方が、貴方の不安も少しは和らぐでしょうから」
「…………ロステアール王陛下は、ご無事なのでしょうか……?」
恐らく、それは恋人を案じるあまり零れてしまった言葉に思えただろう。だからこそ、ギルヴィスはほんの少し困った表情を浮かべた後、そっと目を伏せた。
「……すみません。詳細な情報がまだ手に入らないため、今すぐにはお答えできないのです。……けれど、」
そこで一度言葉を切ったギルヴィスは、案じるような目で少年を見た。
「……今回ばかりは、ロステアール王も苦戦なさるかもしれません」
瞬間、少年の背筋を走ったのは、自身の危機を知らせる怖気だった。心臓が早鐘のようにばくばくと鳴り、掌にじわりと汗が滲む。
グレイ・アマガヤは、魔術の指南をする傍ら、様々な情報を少年に与えていた。例えばそれは帝国の歴史であったり、円卓の国々の特徴であったり、戦術のようなものであったりと多岐に渡っていたが、考えなしに詰め込んでいた訳ではない。グレイが少年に与えたのは、こういった事態に対応するための知識だった。だからこそ、少年はその知識を以て現状を把握するために、赤の王のことを尋ねたのだ。
故に、
(この人は、ギルヴィス王じゃない……!)
ギルヴィスならば、赤の王の無事を疑うような発言はしない。それは、グレイがはっきりと言っていたことだ。そしてこの場で考えられることがあるとすれば、帝国がギルヴィスを騙り、少年をどこかへ連れて行こうとしている可能性だろう。
しかし、目の前のこれがギルヴィスではないとしたら、周りの兵も十中八九帝国の手の者だ。そんな中で、少年に何ができるだろうか。自分がギルヴィスの正体に勘付いたことを悟られぬように努めるくらいのことはできるが、それでこの場を抜け出せる訳でもない。
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