アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
86.新しい部屋
-
「ここが今日から、新しい俺たちの家だぜ。」
透さんが新しいマンションの部屋のドアを開けながらそう言った。
僕は猫のタマを手に抱えながら、その広い部屋を目の当たりにした。
「もちろん、お前の部屋も、タマの部屋もあるぜ。」
「た、タマのもっ?」
「ああ。こっちだ」
透さんに連れられて2階に歩いて行くと、とある部屋を開けて、透さんがどやっとした顔で僕に振り向いた。
「わ、いつの間にこんな、猫用のアスレチックまで揃えたの」
「通販で買ったのさ」
「へー…」
それにしても透さんが猫の玩具買うなんて、…なんか買ってるところ想像すると笑いが込み上げてきてしまう。おかしい。
「なんだよ」
僕は少々ムッとした顔でこちらを見てくる透さんに何でもない、と言いながら何とか笑いを堪えた。きっと笑ってる理由を言ったらしばかれる。
「凛人、お前の部屋はこっちだ」
透さんはそう言うと、タマの隣の部屋を開けて僕に見せた。
「わ…」
新築のマンションということもあって、当然壁も床も全てピカピカだった。前のマンションももちろん綺麗だったが、引っ越して更にパワーアップしている気がする。ベッドも大きくなったような。何より、大きな窓から見渡せる街の景色に僕は瞳をきらきらとさせた。
「どうだ?お前の体のサイズには十分な部屋の広さだろう。ああ、この部屋の窓は開かないようになってるからな。万が一俺の目のない内に落ちでもしたら即死だ。ベランダはリビングにあるから、そっちを使え」
…僕は年端もいかない子どもかよ…成人してるんだけど。
そう思いながら振り向くと、ちょうどポケットから煙草を取り出し、口にくわえる透さんを見た。
「…」
「?なんだよ」
「透さんって煙草吸ってたんだね。そういえばたまに吸ってたとこ見たことある気がするけど」
「たまにな。昔に比べるとかなり減った方だぜこれでも」
「え?」
「かなり丸くなった方だってことだ。学生の頃が1番吸ってたな、思い返せば」
「…が、学生の頃っ?」
驚いた顔をして言う僕を透さんは煙草を手にしながらちら、と無言で見た。
…?
そういえば、今ふと思い出したけど烏堂さんをあの倉庫に呼び出したあの日、透さんいつもと雰囲気ずっと違ったよね…。いつも怖いけど、あの時はそんなものじゃなかった。あの時の透さんは、まるで別人だった…。それに…
「ねえ透さん…」
「なんだ」
開けた部屋のドア付近の壁に背をついて、煙草を口にする透さんを見ながら僕はどこか緊張した面持ちで話す。
「他に…僕に何か話すことない?」
「は?」
「あの時の…倉庫にいたあの人たちは一体どういう人たち?透さん、僕になにか隠してない?」
すると、透さんは煙草を口から離し、あからさまに不味いような表情をして僕から顔を逸らした。
「お前には、関係ないだろう」
「…!」
透さん…やっぱり僕に何かを隠してる。僕は心臓がどくどくと早鐘が打つのがわかり、心を落ち着けるように胸元の服をぎゅっと強く手で握った。
「…透さん…何隠してるの?教えて」
「…」
口を閉ざす透さんの表情はいつもの透さんらしくない、どこか苦しそうな顔だった。…透さん、一体何でそんな顔をしているの?そんなに、僕に言えないようなまずいことなの?
「…透さん」
「…」
「…今回のことは僕も水に流すよ、僕にも非はあったから。でも、…あんなこともうやめて。あんな一方的に何も出来ない拘束された人を気を失うまで痛めつけるなんて…どうかしてる。」
僕は口を震わせながら話した。
「あーあー、めんどくせぇ奴だなお前は」
ビク
ふと聞こえた透さんの声に僕は顔を上げる。
「元はと言えば悪いのはあの男じゃないか。何で俺がお前に小言を言われなきゃならないんだ、お前が手を出されてなかったら俺だってあそこまで怒り狂わなかったさ」
「…じゃあ烏堂さんがあんなことになったのは、…僕のせいだって言うの?」
「さあな。でも発端的にはそうなんじゃねぇか?」
ニヤついた顔をしてこちらを見る男に、僕は表情を暗くして顔を俯かせる。
「だけどこれでよくわかっただろ、凛人。外はお前を付け狙った危険な男がいるってことに。うん?」
透さんが僕の肩を自分の方へぐっと引き寄せてき、僕はそれに小さく声を上げて男の胸に体をもたれかける。そっと上を見上げると、透さんが瞳を揺らす僕を口端を上げ悪い顔で見つめていた。
「お前が俺の言う通りにしないからあんなことになるんだぞ、凛人。お前は黙って俺に身を委ねていればいい」
「…」
「お前は俺の傍に居るだけでいいって言ってやってるんだ。何が不満か言ってみろ」
透さんの話に僕は頭を下に向ける。
すると、透さんが僕の顎を掴んで引き寄せ、キスをしてくる。
「…んっ!」
僕は透さんの腕の中でバタバタともがいた。
「お前のそんな弱い力なんざ俺でなくとも男なら誰でも簡単に組み伏せてしまう。…凛人、お前は俺以外の男に犯されかけた」
「…!」
「よく自分の安全な場所を見極めるんだな。そうすればすぐ分かる……俺の傍にいる方がいいってな」
透さんはふと、僕の腕を掴んで抵抗する僕の体を無理矢理引っ張ってズルズルと引きずって歩き出した。
「お前の部屋は実はもう一部屋あるんだ」
……え?
透さんの話に僕は一瞬悪い予感がする。
「ここだ」
そう言って透さんが開けたその部屋は、一番隅にある部屋で、ベッドがひとつぽんと置かれただけの何も無い質素な部屋だった。
それにここ、窓がない。上に換気扇があるようだが本当にその他は何も無い部屋のようだった。
「…なに…?ここ」
なんだかここはまるで……
「お前の為に用意した躾部屋さ。」
透さんが背後から僕の耳元で囁き、僕はそれにぞくっ…と寒気が走るのを感じる。
「今日はここにお前を閉じこめてやる。今回の件もまだ反省させないとな。なあに少し経ったらすぐ来てやるさ」
「あっ!」
どんっと体を透さんに押される。部屋に入れられた僕は、はっとしてすぐ後ろに振り向くも、がちゃんと扉を閉められる。
「と、透さんっっ!やだ、僕こんなところ…、出して…っ!」
「まだ出さない。安心しろ、またすぐに来てやる。夕飯を持ってな」
ドアの向こう側の透さんの声を聞きながら僕はずるずると体を落としその場に尻もちを着いた。
どうして…透さん…。
僕は床についた手を握り震わせながら、顔を下に俯かせた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 178