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ビール
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「ハル、先にお風呂入っちゃいなよ。」
プリンを食べ終わり、ルカは手際よく食器を拭いて片付け始めた。
「あー・・・、うん、じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
俺はのそのそと風呂場へ向かう。
「寝巻き、僕の使っていいから。」
「ありがとな、いってきます。」
脱衣所まで湯気が立っていて、風呂はもうほとんど沸いているらしかった。
俺は服を脱いだ。
ここでいつもルカも服を脱いでいるのだと思うと、なんだか恥ずかしかった。
・・・俺は意識しすぎなんだろうか。
頭を洗い、体を洗う。もしかしたらに備えて、丹念に。
いや、そもそもやりかたすら知らないんだが。
湯船に浸かり、もしかしたらルカが入ってきたりするんじゃないかと耳を澄ますが、物音は遠くの歓楽街の喧騒だけだった。
ルカもこうやって毎日風呂に入っているのかなと思ったら、なんとなく微笑ましい気持ちになった。
風呂をあがって、体を拭いた。
いつの間に用意してくれたのか、ルカの寝巻きがある。
顔を寄せて匂いを嗅いでみたが、・・・洗剤の匂いしかしない。
・・・変態か俺は。
おかしなことをしている自分に気付いて、慌てて服を着た。
俺のほうが体格が良いせいか、ルカの服は横に窮屈だ。
服を着て、リビングへ戻る。ルカは、一人ビールを飲んでいた。
「お帰り。歯ブラシ出しといた。」
ふふふ、とゆるく笑って、ルカは抱きついてくる。
「ん・・・ちょっと飲みすぎじゃないか?」
俺は、しなだれかかってくるルカを支えてやる。
ルカが俺の耳元でぼそっと囁いた。
「好きな人が目と鼻の先で裸になってんのに、シラフで過ごせない。」
「ちょ、・・・それってどういう・・」
俺の質問には答えずに、ルカは風呂場へ行ってしまった。
俺はその場に、ずるずるっと座り込む。
なんだあいつ、・・・
ルカの体温がまだ残っているみたいに、体が熱い。
もう体重を掛けられているわけでもないのに、体が動かない。
俺の方が酔っているみたいな気分だった。いや、間違いなく酔っている、ルカの声に、体温に、あの眼に。
またいままでに見たことの無い表情だった。
とろっと溶けそうな目、少しざらっとした低い声。それらは、ルカの野生を感じさせた。いつもふわふわと重さを感じさせないルカの、重さや質感を刷り込んでくる。
・・・ルカってあんな声、出るんだな。
いつもわりと滑らかな高めの声で喋るルカが、俺の耳元で出した声は、かすれた、艶のある声色だった。俺はその声を聞いて、ぞわっとした。
喰われる。なぜかそう思った。
俺は、逃げたいような、でも逃げられないような気持ちにさせられる。ルカの目が、俺を誘っているからだ。
まるであのきれいなルカの目に引力があって、惹き付けられているようだった。喰われるとしても、あの目からはきっと、逃げられない。蝶が花に寄るように、引き寄せられてしまう。・・・
とりあえず、歯を磨くことにした。日常のルーティーンに脳みそを引きずり戻すと、少しは心臓の音が落ち着いた。
・・・多分これから、俺は。
・・・キス、くらいはする、よな。
・・・場合によっては、それ以上のことも。
相手は、ルカだ。なのに、知らない人と二人きりみたいで、俺は少し怖かった。なんだよあいつ、二重人格なの?あんな目で声で色々・・・とか、、、、
うがいしながらもそわそわしてくる。尻がそわそわする。ジェットコースターで落ちている時とか、小さい頃耳かきをしてもらった時のように。
歯磨きを終えて俺は、小さな机の前に座った。
机を挟んで向こう側に、ルカのベッドがある。
さっきまで気にしていなかったそれが、今は異様に存在感を放って見える。
どうしよう。さっきのままのルカが風呂から出てきたら、本当に手に負えない。
告白する前の、ルカのじっとりした目が思い出される。あの時は、まだ跳ね除けられた。けど、風呂に入る前の雰囲気では、絡め取られてしまう。どこであんな目つき覚えたんだ。
俺はあの目に、声に、自分は「捕食される側」なのだとわからされた。
ルカに女の子にするようにしてみたいとうっすら思っていたけれど、多分俺がリードされる側だ。そして、優しくはしてくれると思う。けど、ルカは多分俺が全く知らなかったところまでしてくるような気がする。
恐怖と、マゾヒストじみた快感が頭を支配する。ホラー映画を見てるときの感じに似ていた。どうなってしまうんだろうという気持ち。でも、どうにかされちゃうのは画面越しのキャラクターじゃない、俺だ。
「ハル。」
「あ・・・」
ルカが風呂からあがってきた。ああ。やっぱり、あの目。背筋がぞくっとする。いつもふわふわとしている髪の毛は、ルカの首筋に濡れて張り付いていた。それも、ルカの印象を変えている一因かもしれなかった。
「ハル、おいで。」
ベッドに腰掛けて、ルカが低い声で呼ぶ。興奮しているのか、さっきの押し殺したような掠れ声で。自分を見て興奮しているのかと思うと、めまいがした。
俺は、従ってしまう。ルカの茶色い目がとろけそうで、おいしそうで。隣に座ると、近くでよく見えた。
ルカの瞳の中に、俺が映っている。
ぐにゃりと歪んで見える自分の顔は、それでも恍惚が現れていた。
じっと見ていたら、ルカが電気を消した。
「あんまり見られると、恥ずかしいよ。」
暗闇の中で、ルカの声だけが耳に届く。
「ルカ、」
「ハル、・・・いいよね。」
ルカの言葉遣いは柔らかかったが、語調は有無を言わせないものだった。
「ハルはじっとしてていいから・・・」
暗闇の中でルカの手がからだをまさぐってくる。ルカの手は、こんなにも大きくて男らしかったのだな、と、俺は驚いた。
「う・・・」
太腿、腰骨、ウエスト、・・・と、ルカの手が、体をなぞるように昇ってくる。背中に回された手のひらは温かいのに、俺は小動物みたいに震えた。
「目、つぶって。」と言われ、言われるがままに目をつぶる。ルカの息が近づいてくるのを感じた。ああ。唇と唇が重なった。柔らかくて、温かい。
ルカも始めてするキスなんだろうか。少し息が乱れていた。
唇を重ねるだけのキスを続けるうち、俺はルカのことをもうあまり怖いと思わなくなっていた。思わず、ルカの背中に手を回した。
ルカの手が俺の頭の後ろを包むように撫でまわす。体の弱いところに触れられて、脳みそが混乱する。ルカが体重を掛けてきたので、そのまま大人しく押し倒された。
「んんっ、」
ルカが舌を入れてくる。くちゅっ、という音に鼓膜から犯されているようで、興奮してしまう。
ルカの舌は俺の歯列をなぞって、閉じていた歯をこじ開けてくる。そうして、俺の上顎の、歯の奥を愛撫し始めた。
くすぐったくて、ぞくぞくする。きもちいい。おかしくなりそう。
俺は、ルカの唾液を飲まされていた。ルカの舌を噛んでしまわないように口を開けていたら、ルカは興奮しているのか、大量に唾液を出していて、それは重力で俺の口の中へ流れ込んできていた。
こんなむりやり、みたいな。でも、興奮する。俺、マゾっ気があるのかもしれない。ルカは興奮して俺の顎を掴み、更に奥まで舌を入れようとしてくる。
「っは、ルカ、っ、こわい。」
目を開け、ルカを押し戻す。
多分そうされていたのはそこまで長い間ではないと思うけれど、すごく長く感じられた。
「はるっ、」
俺の手首を掴んでのしかかってくるルカ。
「まて、っ、まて待て待て、怖いって。」
もう一度押し戻すと、ルカがはっと我に返るのがわかった。
「ッ、ごめん・・・」
少しずつ目が暗闇に慣れてきて、ぼんやりとルカの顔が見えた。
恥ずかしそうな表情をして、ごろっと俺の隣に寝転がる。急に上からの重力がなくなり、涼しいような、ちょっと肌寒いような感覚がした。
「ルカ・・・」
俺は、ルカの手を握った。温かい。顔を盗み見ると、放心したように天井を見つめている。
「・・・ちょっと早かったかなぁ・・・」
横顔だったのがこっちを向く。
「・・・」
なんて答えたらいいのかわからない。俺はルカが好きだけれど、こういうことについてなにも想像できていなかった。
「こういうの、いや?」
「いやじゃないけど、ルカが急に豹変するから怖い。」
素直な意見だった。スキンシップはそこそこきもちいいけれど、ルカが別人のように変わってしまうのは、慣れない。興奮するけれど、怖かった。
「ハルが煽るのも悪い。」
「いや、別に煽ってないって。」
「うそだぁ、煽ってるでしょ、さっきだって、背中に爪立ててきた。」
「え。」
ルカが言うには、ディープキスしながら、俺はルカに思い切り爪を立ててしがみついていたらしい。、そんなことしてたのかと、一気に自分を信頼できなくなった。無意識って怖い。ルカのあのサドな態度も、意識はしていないのかもしれない。
「なんにせよ、ごめん。怖い思いさせて。」
「大丈夫。これぐらいで嫌いになったりしない。」
俺はルカの手をぎゅっと握る。
「というか、俺もごめん、痛くないか?」
「痛いけど、なんか嬉しかった、ハルが必死なのが。」
「ね、ハル、へんなことしないから。」
と、ルカは俺に抱きついてきた。声色からして危ない感じはしないので、俺も受け入れる。ルカの体は温かくて、どこか甘い匂いがした。
「甘いにおいがする、小麦粉みたいな。」
「いっつもいじってるからね、小麦粉。」
「うまそう。」
と、戯れにルカの首筋に歯を当てると、
「もッ、・・・やめて。」
とくすぐったそうな声を出された。
かわいい。ちょっとだけ、ルカが俺に興奮する気持ちがわかった気がした。確かにこんな声を出されると、煽られている気分になる。やめてと言われているのに、更に首筋にキスを続けていると、ルカが俺の上でもがいた。
「ハル、っ、っふ、くすぐったい、・・・ね、ぇ、」
上ずった声を聞いていると、さっきと違う興奮があった。ちょっと支配欲と似ている感覚だった。ルカを強く抱きしめて、さっき俺がされたように髪を優しく撫でる。そうしながら、ルカの首筋から鎖骨にかけて、舐めたり、強く吸ったりする。そのたびルカは、くすぐったそうな声を上げた。
「ひゃ、あ・・、んん・・っ、」
俺のしていることで相手が声を上げるのを我慢できていないのだと思うと、興奮する。もっと、もっとあられもない姿を見てみたい。
「・・・あ、」
俺は思わずルカを離した。ルカの声を聞いているうちに、勃起した。瞬間、そのことを、ルカに知られたくないと思った。
「・・・ハル?」
ルカが不思議そうな顔でこちらを見ている。自分に嫌悪感が走った。なんだか、ルカを見てこんな風になってしまうのは、不道徳なことだという気がした。俺は、ベッドの上でルカの反対側を向いた。
「ルカ、・・・ごめん。」
「・・・何が?」
ルカは、さっきのようにじゃれあいたいのか、体をくっつけてくる。そして、俺の体の異変に気付いた。
「あ・・・」
「・・・ハル、勃ってる。・・・」
ルカは言うなり、俺の下着に手を滑り込ませてきた。
「ちょ、・・・おい!」
「いいから。さわらせて。」
ルカの細い指が、俺の敏感になっているところに絡みつく。
「あ…」
やべえ、きもちいい・・・
「こっち向いて。」
「いやだ。」
「顔見せて。」
ルカも俺と同じ気分なんだろうか。相手が気持ちよがっているのを見ると、もっといじめてみたくなる。優越感と愛情が混じったような、そんな気持ち。
「ハル、こっち向いて。」
ルカの手つきが更にきわどくなる。俺は、それから逃れたくて、言われたとおりにルカに向き直った。
「・・・嫌だ。」
「・・・嫌なの?」
「ルカの手を汚してるから嫌だ。」
「別に汚されてるつもりはない。」
「でも、・・・なんか、ルカに汚い面を見せてるみたいで嫌だ。」
「・・・好きな相手と寝てたら、普通だよ。」
「・・・」
俺の中ではルカは、汚してはいけない存在だった。それなのに、こんないやらしいことをさせている。しかも、それが気持ちいいなんて。背徳感と自己嫌悪で、死にたくなる。
「じゃあ、一緒に汚れちゃおうか。」
と、ルカは手を離して、自分も下の服を脱ぎ始めた。
「な、何を・・・」
俺の体液でべっとりしたルカの手が、俺の手を掴む。
「ハルもやって。」
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